「冷たい熱帯魚」「恋の罪」

園子温監督の代表作「冷たい熱帯魚」をついに観ました。

これまで何度も観ようと試みましたが、口コミにあふれる「グロ注意」「相当のグロ」にずっとひるんでた。
極度にグロが苦手な私ですが、どういう星回りなのか「今なら見れる!」となぜか思いました。

「冷たい熱帯魚」が埼玉愛犬家連続殺人事件がベースであれば、「恋の罪」は東電OL殺人事件がベース。
このどちらも、何年たっても多くの人の心に深い印象を残す事件と思われます。
映画はあくまで「事件をモチーフにした」だけであり、結末を見ると「あ、違うんだ」とわかる展開にはなってます。
以下感想。(ネタバレあります)

「冷たい熱帯魚」(2011年)

とにかくでんでんがすごいという話はよく耳にしました。
確かにすごいです。また下品さがすごいうまいんですよね。
私は吹越満さんに惹かれました。吹越さんの目ってきれいなんですね…すごい純粋な目をしてた。
でもそういうふうに演じてんですよね、きっと。吹越さんってヤバい役はほんとヤバいですから。
しかも最後、吹越さん演じる社本が狂ってからはやっぱり目が違ってた…

この映画の冒頭、始まり方にはすごいワクワクしました。
音楽の感じとか、これぞ映画!という興奮はとても久々な気がして。
このワクワク感は、伊丹映画とか北野映画、それ以前の80年代の映画とどこか通じてる。
あと異様なダサさと誇張された違和感がすごい特徴的。
神楽坂恵さんがまた地味な装いなのに、ハミ乳度がすごいんですよ。あんな人、いそうだけどなかなかいない。そういう違和感がすごい楽しい。熱帯魚店の女子店員の制服がタンクトップにホットパンツとか。あれは映画的な誇張?事実?
園子温監督は友人が宗教にハマったという体験がおありだからか、映画にも洗脳されたような集団がよく出てきます。それが不気味・それがゾクゾクする。

ただ、長い。2時間半。
最後はうんざりしてしまいました。
というのは、社本の性格が180度変わって、女を殴る蹴るするんですよね。
園子温監督の作品は「女性讃歌」がベースにあるように見せてますが、それを信じるならば最後は女からの復讐があるはずと、それを頼みの綱のように見ていた。
そんで復讐はあったけども、「女性讃歌」と真逆の女性観も感じられる気がして、ラストはスカッと受け止められなかったです。「気持ち悪い」のオンパーレドで凝視できなかったというのもある。

グロについてですが、最初の方にいきなり吐くシーンがあって、結局あの意味がよくわからなかった。
妻の料理が全部レンチンものだから?口に合わないくらいであそこまで吐く?いや、まさかね。なんか疾患を抱えてるんだろう…と思おうとしたけど、やっぱりあの激しさに見合う何かは私は見出せなかった。
むやみやたらのおう吐シーンには私はずっと抵抗していきたいですよ。
解体のグロは、「ここからだな」というのがわかりやすいので目をそらしてれば大丈夫です。私は途中音を消して、薄目で字幕を見てました。
わりと早い段階で1回。そのあとはずいぶんなくって、後半にダダ・ダダっとあります。ラストはやけくそ打ち上げ花火のよう。もちろん薄目。しかしグロが苦手でなければそりゃ見たかったです。字幕だけでも気持ち悪さはありましたが、こんなビビリな私でも観れたのだから、大丈夫。途中までは確かに面白いし、役者さんの演技にも惹きつけられます。

神楽坂恵さんは園監督の奥様で、この映画がきっかけで交際されたそうですね。
演技が完成されてないところがまたいいんですよ。だからこその色気・エロさ・募る違和感がひっくるめて面白さになるという。ボディがまたすごいです…。
あとでんでんさんの妻役・黒沢あすかさん!
あの方、絶対体当たりのシーンやるだろうなと思ったら、まぁあるんですが、脱いでないところの恫喝シーンもすごい。解体の補助が手慣れてるとことかもリアル。女って献身にあふれるほど器用になるんですよ…。
でんでんさんのビンタは見ててつらかったですが、黒沢さん演じる愛子のビンタは気持ちよかったです。

吹越さんがなんとも陰気な男の役ですよ。星を愛する男。神楽坂さんと再婚する前にデートでよく行ったプラネタリウムにやたらこだわる。「プラネタリウムがなんなの?」と妻から吐き捨てられる吹越さん。悲し…
社本と村田は、生まれ変わって「あまちゃん」の観光協会でタッグを組んでるとは、泣けてきます。
「これは経費で落ちません!」でも共演されてましたね。
おそらく社本のモデルと言われる共犯男性が、今は刑期を終えて事件の告白本を出されてるそうです。
それを買いたいんだけど、アマゾンでなんと5000円の値がついてる…
街の本屋さんで根気よく探してみます。

 


「恋の罪」(2011年)

これも長かった…2時間半です。

水野美紀さんが事件を追う刑事役として主役ですが、監督は神楽坂恵さんを目いっぱい撮りたかったんだろうなと感じる映画でした。
グロは、最初が異常な遺体が見つかるという場面なので、目を細めてればさほど細部が感じられず大丈夫と思われます。解剖診断のシーンも注意。あと音も注意ですね。グロは最初の数十分以内で終わります。吐くシーンもなし!

神楽坂恵さんが小説家の妻役で、その小説家が津田寛治さん。
妻とはいっても半ばメイド。スリッパの位置が1ミリもずれないように気を配る。
30歳を前にして、夫への愛だけじゃ自分を持て余してしまう。そんなはち切れそうな何かを抱えて、金持ちなのにパートに出るんですよね。
またソーセージの試食販売ってところがいいじゃないですか。
「試食いかがですか?」って声も低くてパッとしない。でも神楽坂さんってこういう素人っぽさがいいんだろうな…と思ってたらば!ガラっと変わるのです。
AVモデルとして目をつけられ、そうとは知らず激しい撮影に無理やり挑まされてから、「見られる」ことへの自信がついた。そこからの神楽坂さんがすごかった。試食販売の声もトーンがぐっと高くなります。
家で全裸、「試食いかがですか?」のシーン。あの異様さはちょっとすごい。
あのシーンを見れただけでこの映画はもう満足という感じはしました。

神楽坂さん演じるいずみは、その後、東電OLのモデルとなった女性・美津子と出会う。
この映画では美津子は大学教授。いわゆるお嬢様で家柄もいい、社会的な地位も相当高い女性、そして痩せすぎているというところは、東電OLの方と同じです。
美津子を演じた冨樫真さんはとても魅力的ですが、なかなか美津子のキャラを受け入れられなかったのが飽きにつながったのかもしれません。

渋谷の円山町で売春をしていたというあの女性は、数々の奇行を目撃されていたようだから、激しさや異常性があったのだろうということはわかるけど、映画で神楽坂さんとつながったり罵倒し合ったりについていけなかった。
園監督は女同士の睦み合いを多く描くと同時に、女同士の争いも描きます。
でも女同士ってそこまで足の引っ張り合いするだろうか?とか考えちゃって、思考が途中で止まった。
女って本当にこうだっけ?というところがわからなくて、わかる気がしなくて疲れてしまったというか。
水野美紀さん演じる刑事にしても、女の中の淫らさ→「誰しもが抑圧されている」という象徴として描かれたのかなと思うけど、女の淫らさって、私は自然発生的じゃないような気がしてる。誰にでも内包されてるものじゃない。いつでも発動しかねないものでもない。性欲と淫らさは違う。ある種の淫らさは病とつながる領域ものじゃないかと思ってる。園監督は女のことをよくわかってるふうに描くけどなんもわかってない人のようにも思える。
だから、男性の理想像としての女が描かれてるんだと割り切れれば、それでいいのかもしれない。最後はそんな冷めた感じで観てました。

拒食症は女性の抑圧の表れとは思うし、1日に4人と寝ると課していたという売春行為は自傷行為に近い。もしくはなんらかの承認欲求とも結びつくかもしれないですね。人は承認欲求とともに生きてると思うのです。意識的にせよ無意識的にせよ、それを自分から切り離して生きることなどできないんじゃないのかな。どういう形でその欲求を満たすか、どう表れるかは人それぞれ。
高い地位を得てもそれじゃ満たされなかったこと。やっぱり社会から真っ当に承認されなかったことでしょうかね。男性中心の社会。あの時代は特に、女性の社会進出と称賛がすぐには結びつかなかったような。ならば堕ちて承認される。その女性の心理はわかりようがない。だけど永遠に推し量ろうとしてしまう事件、それほどのインパクトでした。

水野美紀さんはとても美しかったです。
児嶋かよ!というのは結構思った。相方のリアルの姿だったりして。ああいう男はどれくらいいるんだろう?女には淫らさがあると決め込んでる妄想マウンティング野郎。
映画の男性は誰も魅力的じゃなかったけど、それでいいのかもしれない。魅力ある男が誰1人いないからこそ女性たちの説得力が増すのかな。
魔女っ子クラブのオオクボは、冷たい熱帯魚の舎弟のオオクボだった発見が嬉しかった。

 

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