Categories: TV・ドラマ

大豆田とわ子と三人の元夫最終話

最終話がまたすごかったですね。泣いた・・

毎回泣いた泣いた言ってるけど、8話より9話よりも泣かせられるとは思いませんでした。
「感動のドラマ」とかいうんじゃなく、自分の深い部分に刺さる表現だからと思う。
とりわけ風吹ジュンさんと岩松了さん。

私を選ばなくてよかったんだよ」とマーは言う。
すごいセリフです。
二重三重で胸に思いが押し寄せた。
とわ子のインナーチャイルドみたいな部分もわかる気がした。
「何もかも捨てればよかったんだよ(マーのとこへ行けばよかったんだ)」と娘が思うとき、人としてのフェアな観点に自分でも成長を自覚すると思う。
と同時に怒りもこみ上げるかな。「私のために本気の愛を捨てたなんて…」
時間はもう取り戻せない。「私」という存在が母親の自由を奪ってたんだと想像しただけで引き裂かれそうになる。家族への我慢や忍耐を「愛」と思い込んで私を育ててたなんて。
いくつになってもほんの小さなことで「じゃあ私なんて生まれなきゃよかったんじゃないか?」と思ったりして、そんなとき本当は何を必要としてるんでしょうね。
マーは「誰しも胸に穴が空いてる」と言っていた。その穴を埋めるためにジタバタするのが生きることと。
その穴を今でも全部母親に埋めてもらいたいと思っていない。
でもとわ子は父親もあんなで…。

あんなでって言いながら岩松了さんの悲哀にも泣けた…うぅ…。
子どもの成長著しい時期に自分は家を出てしまった。
今や社長という娘を誇りに思いつつ、転んでも自分1人で立ち上がろうとする健気さになぜか罪悪感。
男親ってそうなのかな。
もっと男に守ってもらう人生なら幸せだったろうにと思うのかな。
網戸をちゃんとレールに乗せたのが結局父親だったなんてね。
岩松さんととわ子は折り合いそんなよくない、とはいっても、父親に冷えたグラスとビールを差し出すくらいの気は遣える。
父親はそのグラスにビール注いで娘に差し出し返す。そして乾杯。そういうとこ。
父親がどんなであってもこういう仕草ひとつで「本当はもう許してる」と素直に思えたりする。
一度は愛した人だものね。

 

風吹さん演じるマーがとにかく素敵でした。
とわ子のお母さんとマーが元恋人!!?という衝撃はそりゃあったけど、マーの愛や言葉は性別あんま関係ない。
「私より家族をとった。それ当然じゃん。それでいいんだよ。」という言葉が出るまでどれだけ孤独な日々を過ごしたでしょう。
「こんなに素晴らしい娘と孫が生まれたんだもん…」(家族が連綿と続く…それが正解じゃない?世間一般的に)
坂元裕二さんはそれをマーに言わせることで世の残酷さを浮かび上がらせたんですよね、きっと。
だからこそ「結婚」に関して決定的なところを描かなかった。世間一般的な結婚描写を避けたんだと思う。
「正しさ」の枠からはみ出たものの愛おしさが、これでもかと描かれたドラマだったのですね。
唄ちゃんはとわ子とマーの背中を見て、「やっぱり私は医者を目指す」と宣言した。
女が1人で生きていく姿をやっと肯定できたのかな。今まで頑張りすぎてたお母さんしか知らなかったけど、頑張った先にあるものは、教科書にはない美しきオリジナリティー。

 

恋愛マニュアルを読みあさることがすっかり習慣づいてしまいまいしたが、「器の小さい男を見極めるべし(付き合ってはいけない)」というページを昨日読みました。
まず代表的なのが「ケチ」ですよね。
あと束縛。独占欲。理屈っぽさ。ネガティブ。
彼氏でもないのにやたら嫉妬してくる男には要注意!!とのことです。
しかしとわ子の夫ナンバー2とナンバー3はすごい器ちっちゃい。鹿太郎とシンシン。
ドラマですけどね、あんなに器ちっちゃいのに2人が愛おしいのは、「好き」ということにまっすぐだからですかね。
下心の好きじゃなくて、「守ってあげたい」というヒーロー願望からの薄っぺらいような好意。でもその薄っぺらさがいいんじゃないの?こいつ取り繕うとすらしてないな…という自分勝手さと、本当に滲む優しげな愛情とか健やかさ、それさえあれば信じられる。人生は託せなくても…

松たか子さんがほんとお見事でした。表情が素晴らしすぎる。
最後、夢の中で元夫たちが「いいこと」言ってるシーン。
「何言ってんの?」って夢でも思うとわ子だけど、その目は少女のようにキラキラしてて、とわ子は埋められなかった空洞を彼らの前ではいっときオープンにできたんだろうな。自分こそ薄っぺらいお姫様でいられる瞬間。
それは笑っちゃうくらいな夢だけども、「僕は君が好き」「僕だって好き」「僕だって!」、いつまでも私を取り合っててもらいたい。竹内まりやっぽく松さんが嬉しそうだったとこはもう泣き笑いでした。
だけど物語はまた1話や2話に戻っていくんでしょうね。
男たちはまた恋をして、とわ子は束の間ひとりになる時がくるかもしれない。
それを予感させるエンディング…と私は感じましたよ。
とわ子だってまた恋するかもだけど、それでもまだ追いかけててもらいたい。自分へのベクトルこそがなんとか生きるための精神安定剤、みたいな。

 

近藤芳正さんも最高でした。
あと最後の初恋相手「あまかつ」にも笑えた!あまかつって!(天勝)
またあの竹財さん?微妙にスかした男性でしたね〜。今までどこにいた?というような自称イケてる男性陣がたくさん出てきて素晴らしかったです。
岡田将生さんも相当イケてるのに、あのスかした面々と対極みたいに見えたのがすごい。
思えば松さんとは映画「告白」でナイスコンビでしたね。
角田さんも最高。コント師の輝きを見た気がしました。
松田龍平さんもセリフがめちゃ少ないのになんでしょうね、あの説得力。ほんとオーガニックな男。
あんな人は絶対絶対いない。でもみんなああいうふうになりたくて、せいぜいしろくまハウジングのメンズのイケすかなさです。
かごめみたいな女性もいそうでいないと思う。
でもとわ子はいる。
40代女性ってみんなある意味とわ子的と思う。
仕事への熱意はピーク過ぎても惰性でこなせる器用さがあり、自分も許されたいから人を許しまくる。
かっこ悪いこと経験してきた分「どうにかなるっしょ」と度胸があり、40年も生きてれば「こいつは悪・最悪」というジャッジも定まるので堂々毒づく。それでいて少女性も存分に残ってたりして。諦めてない。女でいたいし綺麗に着飾りたい。
でも目指すのは上昇なんかじゃなく。枯れていくことに数年前から怯えてるので、こぼれ落ちそうなものにはむしろ敏感。なのにTVでもドラマでも脇に追いやられて、ぜい肉担当みたいに位置付けられてきた。もしくはスーパーウーマンすぎる仕事一筋女。

数年前にバイトしてた32歳の男居酒屋店長は、40代女性ってみんな子育てで忙しいと思ってたから、子育ても結婚もしてない女性がどう生きてるのか想像つかなかったと言っていた。
だろうね。(江口のりこ風)
この間の「72時間」では40代無職女性が「年齢も年齢なので仕事がなかなか見つからない」と言っていた。40代50代の何がネックで切られるんだろう。体力?教える側が年上に教えにくいというだけじゃないんかね。できれば弱くて可愛いい子に指導したい。奴隷級に育てたい。それだけだろ。(アラフォー女は確かにそうはいかないからね)
身体不調もせいぜいホットフラッシュくらいじゃないですか。メンタルは安定的と思うよ。ヒステリーは年齢も結婚歴も関係ない。なのにそこの偏見もすごい多い。
だけどこのドラマで胸打たれた人が(特に男性)、そのへんをどう捉えるかはわかりません。
世の中を動かしているのはまだこの国では男性メイン。
そしてまた無視されていくアラフォー女と思う。
自己責任論でいけば「しょうがないよね」ということ。
よかれと思って柔軟的におとなしく生きてきて、令和にまさかこんなドラマと巡り会えると思わなかった。

とわ子みたいにみんな生きて!とか、実はあなたも輝いてる!というドラマじゃない。
モテていいですね!とかでもなくて、とにかく下降方面のドジと引かれるような本気度…下り坂に愛おしいものがあるっぽい。そんなドラマだったでしょうかね。

 

shikinemoli

2009年からホロスコープ・タロットを学んでいます。 ドラマ、ミュージシャンが好きなので、好きなものと星読みをつなぎ合わせてみた場所です。 鑑定の折にはよろしくお願いいたします。

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