正規・非正規、属すること

昨日の「モーニングショー」の特集は非正規雇用問題。

 

自分が現在非正規なので、このテーマには強い関心あり。
最近のモーニングショーって「女性の就労」「少子化問題」に特に力を入れてますね。
しかし「構造的な・根深い問題」とコメンテーターはため息交じりに言い、羽鳥さんの「うーん……」でコーナーは終わる。

 

私自身5年ほど前、「好きで非正規を選んだ」つもり。
モーニングショーではみんな非正規の悲哀に寄り添ってくれるけど、悲哀ばかり強調されると、自分の選択は間違ってたんじゃないかと思えてくる。

しかも昨日は「なんとか頑張って正社員にとどまった方がいい・手を離してはいけない!」という強調が目立った。
5年前に非正規への道を固めるまでの死にそうな心が思い返されたんですよね。

 

それは村田沙耶香さんの「コンビニ人間」読後の絶望と似た感覚。
「今ふつうに幸せ」と感じていた自分の景色がぐるっと転換して、「かわいそうなお前」という亡霊のような視線を自分の外に感じ、病みそうになった。

コンビニ人間」の主人公・恵子はコンビニバイトの仕事にやりがいを感じ、休みの日もコンビニのことで頭いっぱい。ただ、どうも「心」がない。感じられないというか。
そんな恵子は「36歳未婚でバイト」ということで同窓会でも浮きまくるけど、そもそも人付き合いや恋愛に関心なし。
スーパー機械的に働く恵子を肯定する人は誰もおらず、物語の中で明らかなクズ男からも見下され罵倒される。どんなに頑張っても他人にとっては属性しか意味がないような描写。

でも恵子はそれを受け止めるような人間じゃないので、誰が受け止めるといったら、読者=自分。これがつらかった
「未婚の非正規って世間にそう見られてんの!?」と思ったら友達にも会いたくない気分にいっときなったりして。

 

 

正社員をやめたいんだと死にそうな迷いの中にいた時、「属する」ことへの限界を感じまくっていた。

社会は属していない人に容赦ない。
だから非正規がどんどん貧困化していくのかな。
属してないなら自己責任だろと。

そうなんかねぇぇぇ。

 

だから自分は非正規、しょうがない。そう思ってきたけれど、容赦ねぇなという体験もしましたね。
非正規が正規よりおいしい立場になると、それを阻むようなルールがいきなりできたり。
給与換算されない残業を求められたり、ちょっとしたことで始末書。
時間めいっぱい「あれもやって」「これも」と仕事を振られ、休息しようものなら「対等に立つな」と言わんばかりに「次はあれ」と課してくる。菓子とか食べながら。

正社員は勤務時間中1時間ずっと大笑いしててもお金もらえる人たち。
そういう恩恵を忘れてしまうのか、「なぜ自分たちが非正規のためにあれこれしなくちゃならないんだ」といきり立ったりする。
非正規からの訴えはクレーム扱い。「権利ばっかり主張してくるヤツ」と複数人で笑う。
正社員の複雑な人間関係によりあなた方の状況を改善することはできないのよ・察してねとなだめられるならまだましなほう。
非正規も非正規で「今日は社員さん、話聞いてくれた!」と感動で手を取り合う。
あれこれ諦めすぎてるから喜びのレベルが低いのなんのって。
安倍・菅ときて、岸田総理の答弁に「なんかうちらの状況わかってもらえてるっぽい!」と錯覚するのとすごく似てると思った。

 

属したことによる身動きの取れなさは、もう正社員の病理とも言えると思う。
社への忠義とセットみたいな安定路線が崩れるのは怖い。だから守る。動かなくなる。

そんな正社員にはなりたくない。
たとえ金銭面で損するとしても。
人生を正規と比較して暗い気持ちになるんなら、「自分の幸せ」をただひたすら追求するんだ。
そういう非正規も多いんじゃないかと思う。
ま、荒波にダイブした計算なし野郎と思われるのがオチだけど。

 

ただモーニングショーとかで問題になっているのは、出産・育児で退職してから正社員に戻れないとか、そういう不本意な非正規のことでしょうね。
非正規であるために、子どもを持つことに大きな不安を抱える人。
休んだ分、無給になるために必死で働かねばならず、余暇のない自分は恋愛もできないという人。
これは少子化にもつながるということで大きな問題と。

 

そんな私も正社員にやっぱなろうとコロナ禍では思いました。
手術で3週間休んだ時、療養手当が一切出ないということを改めて突きつけられ、それでも手術・入院代がかかりますからね。
しかも「長期休暇のお詫び」菓子折りも購入しなきゃだし。

ただ、どのリクルートサイトも、感じ悪いんだこれがまた。
「これだけのスキルと経験があれば採用できますが、ありますかね?特殊技能ですよ?」
「あなたの経験をめいっぱい入力してください!!」
経験・・技能・・はてな・・

15年ほど前は、PC操作できる人が重宝される時代で、私なんてブラインドタッチできるだけで時給1700円のバイトをしていた。
そんなの今はねぇ。パワポを習得する機会もないまま現在に至る。
そうすると「15年、あなた何をしてきたんですか?スキルアップしてこなかったんですか?」と亡霊がささやく。

 

もちろん立派な正社員もたくさんいるし、むしろほとんどがいい人。
でも正社員が立派なら非正規だって立派で、人としての立派さと雇用体系は何の関係もない。
なのに人生の選択肢や生活保障に大きな差があることが大問題じゃないですか。
属するって、「我慢しなきゃいけない」という強制感ありますよね。日本だからかな。
それがとても怖い。
嫌ならドロップアウトしかないじゃん、という社会ムードって変わっていくんだろうか。

結婚も「属すること」の一つかな。
「ヒヤマケンタロウの妊娠」で、上野樹里さん演じる亜季はフリーのライターとしてバリバリ働いてるけど、実家に帰れば「35歳未婚、みっともない生き方」と見なされる。家族からも同窓生からも。
亜季も属することを忌避しているように見える。
健太郎と共に子育てするのは決めたけど、結婚はしないと。
「自由に好きなことをやる・自由に選択する」
「それはみっともない人生なんかじゃない」by亜季

 

 

 

 

 

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