「北の国から」再放送が始まって、さぞかし世間がざわつくだろうと思ってたけど、そんなこともなかった。
周囲からも見てる声は聞かない。
「北の国から始まるんだよ!しかもドラマ版!」
と、何人かに声かけしてみたけど、反応はいずれも芳しくない。
「ドラマ版!」とわざわざ強調したのに。
「スペシャル版は、いかにもなアレだけど、ドラマ版は違うよ!」
そういうメッセージを込めたんだけどな(伝わってない)
「私、昔見てなかったんだよねー」
そういう反応が2、3あった。
「だから今回も見ないかなー」という牽制っぽかった。
昔見てなかったことがなぜ今回も見ない理由になるのか、と思わなくもないけど、「この反応で察して・勘弁して!」というニュアンスはキャッチした。
優しげな牽制だった。
じゃあ1人で再放送堪能してやるぜ!と日々見てるわけだけど、かつて夢中になってたとき(15年くらい前の再放送時)と感慨がなんか違う。
この手のドラマは若者だけじゃなく、今や誰にとっても重々しいのかもしれない。
なんか説教を受けてるみたいな。
ってか説教してるだろうね。役者を通しての倉本聰さんの説教。
それに感銘を受けるような人って自分以外いないんじゃないかと、寂しさが押し寄せた。
改めて見ると、大滝秀治さんのインパクト強いですね。
興味本位で田舎に関わろうとする都会人への非難がすんごく強い。
その都会人バッシングを雪子が受けまくっててつらい。
非難を受ける雪子(写真はamazon北の国からページより)
しかし私は雪子派ですね!
竹下景子さん演じる雪子・ゆっこおばさんに今も昔も強く惹かれるのです。
純と螢の「叔母」という立場を自分に重ね見てるのかもしれない。
献身的に家族に尽くしてるつもりでも「しょせん身軽な独身者」と見られたり、ひとところに落ち着かない旅人的なスタンスは「覚悟がない」ということになる。
「それの何が悪いの?」「人って自由でしょ?」
と真正面から向き直る雪子ですが、「自由」がこれほど通用しないこともあるんだと、厳しい壁にぶち当たる。
草太となんとなく惹かれ合って、なんとなくイチャイチャするのも悪口を言われるわけで。
「そりゃそうだ」ってのも麓郷の事情を知るとわかるんだけど、「あんまりじゃねぇか」とも思う。
「麓郷からいなくなってほしい」byつらら
「つららが家出したのは雪子さんが原因」by大滝秀治
あんまりじゃねぇか・・・
恋愛すらも自由じゃない。
草太とつららは「いつか嫁に来る」という前提での公認カップルだった。
牧場で朝から晩まで重労働・牛の糞まみれ作業・牧場を守っていく。
これを雪子さんはできますか?(できないなら麓郷を去るべき)と、それが正義みたいに突きつけられるシーンはつらかった。
草太と雪子はまだ「なんとなく」の関係なんですよね。
草太が強引にキスして「受け入れられた!」と一方的に舞い上がったのは、雪子の態度が拒否じゃなかったから。
その後、「雪子」と呼び捨てにしたり、自分の牧場で働かせながら、どさくさで抱きつく草太をなんとなく受け入れたっぽい雪子。
でも、草太の恋人・つららに詰め寄られると「草太さんに何の感情もないわ」と言い放つ。
それも嘘じゃなさそう。
草太からぐいぐい来られると、ただ心の穴が埋まる気がするんじゃないのかなぁ。
激しい恋愛を終わりにしたばかりだから。
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東京の雪子と北海道の雪子は全然違う。
東京に戻れば、女の顔になる雪子。
20代半ばの強気な輝かしさ。
でも雪子は東京にも居場所はない。
不倫してたんですよねー。
しかも、相手の子どもを中絶してたってこと忘れてました。
それで東京にいたくなくなって、ずっと同居してた黒板ファミリーを追っかけてきたと。
そう、この再放送ですっかり忘れてたというか、ちゃんと見てなかったようなとこがたくさんありました。
自分は子どもをおろしたのに、相手の家庭にはその子と同じ年頃の坊ちゃんがいた。
それで別れを決意した雪子は、井関(村井国夫)と喫茶店で向かい合う。
「最後に握手でもしようじゃないか。いつか街なかで会ったとき挨拶できる関係でいたいから」
この井関の提案のしょーもなさ!
「北の国から」って本当、男がしょうもないんですよね。
往生際悪いというか、本能的行動で周りを不幸にしすぎるというか。
雪子も「そんなの嫌だわ」ときっぱり拒否。
「私が下北沢に来ることはもうないわ」
「だから挨拶なんてすることもないでしょう」
「別れってそういうことじゃないかしら」
そんなふうに心を井関から引き剥がした雪子はその年末、下北に降り立つ!
この回がまたなんてドラマチックだったでしょう…
年末の買い物に家族と出ていた井関は、電柱の陰にたたずむ雪子に気づく。
抱えてた紙袋を、そっと置いてまた陰に潜む雪子。
未練たらたらじゃないか!
井関は家族の目を盗んで、その紙袋に近づく。
開けると、雪子がずっと編んでいたマフラー。しかもイニシャル付き。
別れる気ゼロ!
・・こういうとこが好きなんですよね・・
激しさをたっぷりたたえた雪子。
雪子はたぶん仕事がそれなりにできて、頭も良くて気が利く。
明るくて一見無邪気。
そんな姿に目を留める男は何人かいただろうけど、井関はその奥に秘められた激しさを嗅ぎ取ったのか引き出したのか。
そんな人とはそう出会えないことを雪子も感じて、一生の恋にはまっていったのでしょう。
井関はそのマフラーに感動したように見えた。
2人の気持ちはまだつながっている、一瞬そう見えたけど、坊ちゃんに呼ばれた井関は紙袋を置いて去ってしまった。
ショックを受けた雪子、その表情がすごかった。
完全なるフリーズ。
1ミリも動かないのに、わなわな震える心がビシバシ伝わってくる!
関係を自分から切ったつもりなのに、切られた。
家族を選んだあの人。
楽しそうなあの人。
そんなことわかっちゃいたのに。
握手して別れようと言ってきた井関の未練に寄り添った自分はなんて愚かなのか。
捨てられたマフラーと自分を重ねれば、フっ…と笑みさえこぼれる。ばかだなーって。
この一連のシーンに震えましたね。
そんな傷心抱えて富良野に戻ったら、草太が犬みたいに追っかけてくる。
数日前にはつららに「俺と一緒になるべ」と言ってたのに!(男ってやつは)
草太もまた不眠症になるほど雪子が頭から離れない。
単にめんこいからってだけじゃない何か。
でも雪子の思わせぶりな態度が草太を舞い上がらせたんでねぇかな。
東京のオフィスなら通用する曖昧さも、麓郷じゃ刺激強すぎなんでしょうね。
五郎とデキてる噂まで立っちゃうし。
でも本当、いい女なんだよな、雪子。
だって、なんぼなんでも電気のない麓郷で暮らしていこうと思うかね。
火を焚いたり繕いものしたり、純と螢のほとんどお母さん。
雪道の運転で死にかけたりもして(馬に助けられた)
雪子、頑張ってるよ〜
いや、中畑のおっちゃんとかは温かく受け入れてるかな。
草太とつららの家族は冷たいっすね。
そりゃそうかもだけど…
雪子の誕生日、草太の父・大滝さんから牧場解雇…ってかそもそも受け入れてないとキツく言われたその帰り道。
真っ暗な家に着いたら電気がパッとついて、五郎や純たちのハッピーバースデーソング。
初めての風力発電でサプライズ祝い!
思わず泣いてしまった雪子。
この家だけが受け入れてくれるように感じたのかな。
また、雪子の激しさが、のちに螢にも引き継がれていくというね。
北の国からって、女もみんな激しいんだこれが。
第1話のオープニングがたばこ片手にイラつくいしだあゆみ(令子)というのがいいじゃないですか。
令子と雪子姉妹のトゲのある会話。
うわー名作だなと思った。
「あんたに母親の気持ちわからないでしょ」とか言われてた雪子。
令子と五郎がなぜ結婚したんだというとこは、最大の謎ですがね。
今日の放送はまだ見てないけど、螢がUFOに連れ去られる回とかありましたよね。
螢をうそつき呼ばわりする純を雪子が叱るんじゃなかったかな。
母親みたいなのに、親子じゃないとちゃんと思える距離感が好きなんですよね。
つららちゃんも素敵だったけども。熊谷美由紀さん。
つららちゃんを下に見るなんてしてないのに、女として対等という気持ちがあるのに、「東京から来た女が田舎を掻き乱す」みたいに見られてしまう。
よくない感じで「上」に置かれてしまう。
大学出てる人はうちらと違うよね、と。
噂話がすぐ広まる田舎の中に、そういう目で自分を見る人がいるってつらい。
過疎の激しい地域の切実な窮屈さが、今回特に感じられてくる。
このあとは令子が病気になったり、恋人の伊丹十三が出てきたり、雪子以上に麓郷を掻き乱す女・こごみが登場したり、そう、いかだ祭りですよ!
まだまだ見どころ満載です。
北海道に音を上げた純を東京まで付き添う雪子。
このときも大滝秀治さんに「出ていくやつは負けたやつだ」とキツい話をされていた。