映画「新聞記者」

「新聞記者」見に行ってきました。

今、日本アカデミー賞受賞記念として再上映してるところいくつかあるようですね。

主役のシム・ウンギョンさん。
孤軍奮闘の新聞記者役です。

松坂桃李さんは内閣情報調査室の官僚役。
この杉原に本当胸を打たれました。

恋愛要素1ミリもないのに、この2人が目を合わせるシーンではドキドキするほどの何か色気?放たれてました。
ストーリーが緊張感にあふれているので、ずっとドキドキしてましたが。
この映画はとても深刻なのです。
深刻なメッセージや訴えをはらんだ映画。
松坂桃李さんもスピーチやパンフレットで言ってたけど、よくこれを世に出せたなと。
だって、TVSの性犯罪記者とか。TVSって!

映画は、東京新聞・望月衣塑子記者の「新聞記者」という著書が原作。
ということは、映画の中で勇気出して告発の記者会見をしたあの女性は、伊藤詩織さんであるはずで。
彼女をずっと取材している望月さんです。
彼女を貶めるツイートが出回るシーンがありましたが、政府系に楯突くと今どんな目にあうかわからない。
誇張がある表現としても、「やっぱそうだったんだ」と思える「上」のなりふり構わなさはもうこんなにも庶民にバレていて。
そして大学新設の認可問題といえば、あれでしょ!?と。

映画の核心部分のこと、私はとある月刊誌で数年前に触れました。
家帰ってネットで調べたら、「あの映画はフィクションだから!」「そんなわけないでしょ!」と、笑い飛ばすような記事が目につく。
いやいや、でも私は目にしたんだ、月刊誌の記事が心にずっと残ってた。
母親と「あそこ認可したらまずいって!」と話してたんだもん。
そして現政権が何をしたがっているか。今もウイルスの騒ぎに便乗して何を強引に進めようとしているか。
全てはやっぱり「そこ」なんじゃないかと、道が一本つながってしまうそのヤバさが決定的絶望として実現しないよう、この映画を世に出したんじゃないか…。
制作スタッフの緊張張り詰めた深刻さ、そう受け止めたのは大げさなことじゃないはずです。

またとても理解しやすい映画です。
むしろ誰でもわかるように(誰も彼もに見てもらうために)、セリフや展開をシンプルにしてくれてるんじゃないかと感じました。
「ヤバイじゃん」「ヤバイよ」
こんな会話が直ちに繰り広げられないとまずい。
たとえ胸の中の1人問答でも。

そしてなぜ主役に韓国人のシム・ウンギョンさんを抜擢したか。
ここにまた、この映画の本気度が感じられる気がする。

日本の女優だと表現できる方いないかもしれないと率直に思うし、スポンサーとかいろいろ…もう本当にこの国は自由に見えてかなり表現の自由が狭まってるとつくづく思う。
そうすると松坂桃李さんや、松坂さんを送り出した事務所ってすごいな…とかそんなことまで思っちゃいます。
あとシム・ウンギョンさん演じた吉岡エリカの同僚役、岡山天音さんがすごいよかったです。
上司役の北村有起哉さんはもう最優秀助演男優賞でしょうと思う。
田中哲司さんも相当怖かった。

 

私はこの週末、仕事関係で息も浅くなるようなショックを受けた。
松坂桃李さんはこの映画の中で何度も呼吸が浅く・荒くなる表現をされてましたが、人は本当に「信じられない」と思った時、鼓動が狂うほどになるのだ…と思ったら泣けてきたりしました。
職場で一度でも「信じられない」とショックを受けたことがある人なら、自分を重ね合わせたくなるシーンがあると思います。
仕事ってなんでしょうね。
私はすべての仕事は「相手」を感じるものと思ってます。
形はどうであれ、「お届けしました」と胸張って誰かに手渡すようなもの。
この世を豊かにするための制作者、私たちはその1人なのかなって。

でももし同じ職場で「お届け先」が違う人が混在していたら。
上か横か、もしくは意図しない方向。
この「意図しない方向」というのが一番苦しいでしょうね。
大抵は「横」なんじゃないですかね。
それが「上」でしかなかったり、「自分」の人が大半だったらば…。

例えば部や室や課の方向性が「上」だったら、意図しなくてもそこに従わないと生活はしていけない。
特に国や政府に近い人ほど。
「知らなくていいコト」でも、政治家秘書の葛藤の回がありました。
生活していけないなんてこと、めったにないと思いたい。
でも現に不可思議な報道を目にすると、今はやっぱりそうなのかな。

私ですら。
意図しない方向にエネルギーを注ぐのがもうとてもしんどい。
注ぐとかでもなく「注がない」という後ろ向きスタンスで働くことはしたくないのに、注力するほど冷ややかさを感じるばかり。
シム・ウンギョンさん演じる吉岡エリカも、同僚から「変なやつ」と言われたり、「ここまでだ」とストップをかけられる。
提供すべき相手はこっち!とわかっているのに、曲げられるのです。
森達也さんのドキュメンタリー映画「i ー新聞記者ドキュメントー」でも、望月さんがまさにそこにぶち当たってました。

新聞記者だから・官僚だから自分と全く違うとは思えなかった。
とても「自分のこと」として見れた、本当にそれくらいわかりやすく「今」の危機感が表現されてます。
この松坂さん演じる杉原のような人が、本当に存在するかどうかは疑わしい。
でもいてほしい・いるはずという「良心」として生まれた役に思えました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。