Categories: 映画・本・ライブ・演劇

映画「こんな夜更けにバナナかよ」

昨日見ました。いい映画でした。


「こんな夜更けにバナナかよ」HPより)

三浦春馬さんの作品をちゃんと見たのは「カネ恋」以来。
いろいろ見るつもりでU-NEXTのお気に入りに入れても、なかなか見れない。
そして昨日。まだ今でも涙をにじませてしまう。いろいろ思いを馳せながら見てました。

 

「バナナ」はみんなみんな演技が素晴らしかったです。
大泉洋さんはじめ、高畑充希さんも三浦春馬さんも、萩原聖人さん、原田美枝子さん、綾戸智恵さん…。
なんたって渡辺真起子さんです。映画「37セカンズ」では障害者をケアする風俗嬢。「バナナ」では大泉さんをケアする介護ボランティア。渡辺さんは本物の介護プロのような安心感がありました。

Eテレの「バリバラ」で数ヶ月前、ALSを患う男性に何人もの学生ボランティアが交代でついて、なんとも和気あいあいとした介護風景を見ました。
また、親元から離れて一人暮らしを試みるダウン症の方の新生活を2週連続で追っていたりと、「障害者の自立」がここのところ特にテーマのようですね。この映画もその流れの後押しになったのでしょうか。
鹿野靖明さんは筋肉がどんどん弱っていく進行性筋ジストロフィーを患っていて、それなのに一人暮らしを実現させた。映画ではこの鹿野さんの自立生活とボランティアとのふれあいが描かれてます。
自助とかなんたらがトップのスローガンに据えられたこのコロナ禍で、「迷惑かけてもいいんだよ」という大泉さん演じる鹿野さんのメッセージがズドンと来ましたね。しかも21時日テレ。メジャー級にふてぶてしい大泉さんが言うと(役で)、やっぱパワーが違います。

モデルとなった鹿野さんは2002年、42歳で亡くなられたそうです。
この映画はそのおよそ7年前の話。1995年ごろ。
どうりで高畑さんと春馬さんがちょっと昔っぽくて、特に三浦春馬さんのポロシャツinズボンスタイル。
この映画公開は2018年。春馬さん、痩せてたなぁ。このあとキンキーブーツ再演だから、ここから体作っていったのか。それとももう既に悩んでただろうか…と、ついそういう目線で見てしまいますね。

 

それにしても春馬さんの演技は実に繊細でした。
亡くなってから殊更聞く「本当に優しい人だった」という評判はきっと誇張などないんだろうなと思うほど。
「優しい」って、人に親切な意味ももちろんあるだろうけど、万物に対してソフトタッチな方だったんじゃないかな。
お弁当の卵焼きを食べるとき口元に手を寄せた仕草が特に印象的でした。
さりげない春馬さんならではの仕草であるだろうけど、彼女である美咲(高畑さん)が作ってくれたものを絶対落としてはならないという気遣いにも思えた。
この田中くんという役は、「わたしを離さないで」のトモの延長線上にあるような、優しげで気弱な役。北大に通う医者の卵です。
人一倍優しいのに、高畑充希さんにかけたある言葉で自分のひどい偏見に気づいたりして、医大を辞めようとする。その苦悩の顔が本当に繊細…。
三浦春馬さんはここ1年くらいとても華やかなモテ系の役が多かったけど、本当はそんなんじゃないということは誰よりも一番わかっているのかもしれない、なんて思いました。春馬さんのマイノリティー寄りな表情はこんなにも救いだったんだなぁ。

大泉さん、高畑充希さん、三浦春馬さんは3人とも太陽火星座。
全体的にとても率直さに溢れた映画でした。
鹿野さんが、最終的に500人のボランティアと関わることができたのも、初期のメンバーと何度も喧嘩して傷つけ合ってでも本音をぶつけたからだという退院パーティーでのスピーチは胸に迫りました。

高畑充希さんは金星が蠍だからか、全体的な雰囲気は射手的天真爛漫さなのに、女性性がはちきれそうなんですよ。
夜中、怒りの形相でバナナをゲットしてきた美咲に「グッときた!」と鹿野さんはすぐ恋に落ちる。
その鹿野さんと美咲が”ベッドイン”寸前になるとは予想してませんでした。
”ベッドイン”とは鹿野流ホラとはいえ、「AV見て鹿野さんは何するの?」と聞く美咲・高畑さんには、私までドキドキしましたよ。今すぐ鹿野さんにまたがるんじゃないか、その瞬発力を日テレで見れるのか!?なんて思ったりして。高畑さんの月と大泉さんの水星が同じ魚座。2人の目つきと言葉だけでじんわりくるものがありました。

退院パーティーという晴れ舞台で、美咲に一世一代のプロポーズをした鹿野さん。
「ごめんなさい…」と断る美咲です。
それはボランティアをやめた元彼・田中くんがまだ胸にいるから。
…と、みんなの前で理由も発表。火星座はとにかくオープンなのです。

田中くんと美咲がなぜ別れたかというと、鹿野さんが田中くんに「美咲ちゃんとベッドイン寸前までいった」と言っちゃったから。
実際は、美咲ちゃんの胸に顔を埋めた鹿野さん。でも、ボランティア仲間が部屋に入ってこなかったらやっぱベッドインしてたかな。
田中くんは美咲を「同情したら誰とでも寝るのかよ」と暴言を吐く。
あんなにいつも優しげなのに、なぜ…。田中くんも自分のこと「全然優しくない」とは言うけれど…。
「同情したから寝たんだろ」と思いたい気持ちと、「同情でしか寝れないだろ」という本音。
自分の本音にショックを受けて、どんどん崩れていく田中くんと三浦春馬さんを重ねてしまった。
本当は優しさで溢れてるのに、偽善で覆われたほんの一部分を責める人。三浦春馬さんの苦悩まで浮かんだような気がしたのは思いを馳せすぎだろうかな。

 

 

私は映画の予告ってあんまり好きじゃないんですよね。特に邦画。
この「バナナ」も大泉さんの「なんかグッときた!」が切り取られてるけど、なんかそういう切り取り方がいかにも邦画で冷めてしまう。
本の帯の独特のセンスと似てる気がします。台無しにしかねない大仰な宣伝。本質とはちょっと違う盛り方。
最大公約数に届けようという魂胆が自分と合わないだけとは思うけど、どんなに豪華な俳優の仰天顔やツッコミを見ても、「おもしろくなさそう」と思っちゃうことが多い。豪華だからいいってもんじゃないんですよ。
その予告のありがちパターンといえば、ズッコケ・仲間との輝かしい笑顔・虹のかかりそうな音楽…そして最後ズッコケアゲイン、もしくは銃声・もしくは怯えた女の目…とか。
主題歌をでかでかクレジットするのもよくわからない。最後の最後にしか流れないのに。
「おもしろそう」な定番の型に何年もずっと当てはめてるだけの気がする。映画や本を手に取る人は「楽しみたい」人よりむしろ「1人になりたい」人が多いはずで、テンション高すぎなんじゃないかなぁと。予告。
って…私みたいな人間にそう思われても大した損失ではないだろうけど、最後愚痴。失礼しました。

 

 

shikinemoli

2009年からホロスコープ・タロットを学んでいます。 ドラマ、ミュージシャンが好きなので、好きなものと星読みをつなぎ合わせてみた場所です。 鑑定の折にはよろしくお願いいたします。

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