NHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」見ました。
(番組HPより)
コミカルに描かれてたけど、怖かったです。
ぞっとしたというのかな。
この世で一番怖いのは権力おじさん、はたまたその周囲にいるあんま考えない人たち?
もしくは、人が思考しないように操作する悪い大人かもしれません。
最初こそ笑いました。
松坂桃李さん演じる神崎真が「言ってること中身からっぽの元アナウンサー」で、これあの人じゃん!?と。
またタイムリーにその人の迷言がツイッターで流れてきた昨日。46%のシルエットがどうとか。
そして豪華な役者陣ですよ。
なぜか溢れるいだてん感。三芳総長の部屋も嘉納治五郎の学長室っぽかったです。
岩松了さんがほんとムカつく。ほんとうまいですね。大仰な仕草がなぜあんなに可笑しいのでしょう。
怖かったのが國村隼さん…いつも迫力ありますね。蠍座だから?
松重さんの適当さもうまかったなぁ。
松重さん演じる三芳総長が心ある人でよかった。だけどあれは理想なのであって。
非正規の研究者・鈴木杏さんと、松重さんの秘書役・安藤玉恵さん、そして帝都大学新聞部の吉川愛さんが、悪化していく事態の堤防役のようで頼もしかったです。
帝都大学のお偉方会議風景が秘書以外男だったのも、あえてそうしたはず。
男は権力の象徴で、女は真実の象徴なのではないか。
鈴木杏さん演じる木嶋みのりは、告発側である自分の綿密さや意見なんて見つめない権力者側から、見下されたりみくびられることに激烈な怒りを表した。あの怒りの叫びに泣けました…
学生時代に神崎を好きだったみのりの気持ちを利用して、みのりの告発を「勘違いか何か」としてもらう引き換えに、助教のポストを与えようと画策した大学理事たち。
そういう時のための駒として大学広報係に引き抜かれた神崎真。
「選ばれ」の中に魂胆があるのが令和かもしれません。
「まさか、この私が?」と胸弾ませながら不信感も捨てきれず、でも結局期待しちゃうんですよ。
しかしまやかしの選ばれ時代・令和はそううまくいきません。
「やっぱねー」って何度もがっかりしてきて、魂胆に気づく速度も年々早まる。
みのりも何度もがっかりしてきたと思う。でも神崎と会う前にリップを念入りに塗った。
神崎くんに私の何かが選ばれたのかもしれない…でも今夜もまさかは塗りつぶされる。
「選ぶ」とか何様だよって話で、思えば最初からそんなポーズだった奴ら。
それでも「選ばれ」を期待するなら、そにつけこむモンスターだって現れるでしょうよ。42股男ってなんだよ。
みのりは研究に打ち込むことで、「世界は私を相手にしてくれる」と思えた。
なのに教授の研究不正論文。
神崎真は複雑なことが苦手で、できれば世の中がもっとシンプルだったらいいのにと思ってる。
だけどシンプルなのは、「科学や研究にあるべき姿を取り戻したいだけ(だから告発した)」というみのりであって、カネとか評判低下を恐れる権力側が事態を意図的に複雑にしてるんだろうな。そんなことばっかり。MIKIKOさんの件とかもちょっと含まれてるだろうか。
すごい!と思ったのは特に最後。
あの鈴木杏さんの叫びのあとに、ワイドショーのコメンテーターの怒りを聞けば、その真っ当さがすーっと入ってくるのです。
神崎真はこれまで「またおっさん怒ってる」で多分流してた。そういう視聴者も多いでしょうね。
「だっていつも怒ってるんだもん」と、モーニングショーを嫌う人は多い。それは「聞いてない」だけなのに「聞く気になれない」と茶化す。
一億総茶化しのツケは必ず回ってくるはずです。
もう回ってきてるかも。そういうところが描かれるドラマかなと思う。
松坂桃李さんがああいう役っていうのがいいじゃないですか。
映画「新聞記者」であの役をやったからこその抜擢のはず。
このドラマでは大いなる不満・不安が訴えられてる。もう日本だめになっちゃうよという。
リアルの世界で踏みにじられる人に光が当たるのは、切なすぎる理想的展開です。脚本家は渡辺あやさん。
真っ当さがずっと嘲笑されて何十年も経っちゃってね。
笑いの権威が薄毛を笑ったら庶民もクラスメートも薄毛をネタにするだろうし、政治家がどんな批判にも耳を傾けず「向き合わない」という方法でこんなにもスルーするなら、何が正しいとかもう考えるのも疲れちゃう。
「正論が嫌い」と渡辺いっけいさんは言う(役)。
その正論嫌いが多数派を占めるドラマ。でも真っ当な叫びが少しずつ人の心を揺さぶっていくのでしょうね。
おのれの好感度、それしか考えてない人が権力持ち続けてるのは今に始まったことじゃないかもだけど、このドラマで少しでも絶望ムードが変わってほしい。そうすればコロナ対策も少し前進するのでは?(するわけない?)