この間、最終回でした。
NHK「逃げる女」
ものすごいドラマ。
ものすごい最終回でした。
主演を務められた水野美紀さんは、ドラマ撮影後に高熱でダウンしてしまったそうですね。
いやぁ…そうだと思います。
ラスト、仲里依紗さんと拳銃奪い合うあのシーンは、見ているこちらも頭の血管が切れてしまいそうな緊張感でしたもの。
ドラマ全話通してあんなにリアルに恐怖感を覚えるということは、あんまりないかもしれません。
何が恐怖だったかって、自分の感情と人の感情の目に見えない濃い部分というか、真っ当に生きているんだという自信に潜む落とし穴というか。
ラストシーンで海辺に佇む西脇梨江子=水野美紀さんの表情は、ほとんど無表情なんだけど「わぁっ…」とじわじわ言いようのない感動でとても胸いっぱいに。
水野さんが演じた西脇梨江子は冤罪で8年も服役。
真犯人の自供により釈放され、それは冤罪でしたとニュースで取り上げられたものの、服役してしまった人に世間の目は冷たい。
それをひしひしと感じながら旅をする。
嘘の証言をした田畑智子さん演じる川瀬あずみを探し出す旅。
その旅の最中に、異形の姿・狂気を宿した仲里依紗さん演じる美緒と出会うという物語。
梨江子は逃げるつもりはなかったのに、美緒との旅でいつの間にか「追われる立場」に。
追っているのは遠藤憲一さん演じる刑事の佐久間。
当時、梨江子に嘘の自供を迫った佐久間とて、今では追っているつもりではなく分り合いたい、梨江子との関わりを求めているのに、逃げる←追うという関係になってしまうどうしようもなさ。
「なんで私がこんなことに?」
梨江子は旅をしながらずーっとそれを探っていく。
始まりは「あずみの嘘の証言のせい」「嘘の自供を迫った佐久間のせい」
自分ではない、「外」にその原因を探し求める。
それがいつの間にか、見事なグラデーションで「自分」が見えてきて。
自分にも見えなかった自分を知る。
最終回で美緒と一緒に逮捕されてしまう水野さんの脱力ぶりは、ああ、結果また負けてしまうのだろうか、人としての弱さの物語なのだろうか…と思ったけども、ラストで海辺に佇んでるということは、今回は「私はやっていない」を貫いて釈放されたのだろうと思う。
そうはいっても2度の逮捕。
ニュースでも全国指名手配者として報道されて。
社会からの風当たりは一層強くなるだろうに、もっと生きにくくなるだろうに、そんなことよりも、そんなことよりも…。
「私は知れた」
「以前気づかなかった視点を得ることができたんだ」
「それだけでもう、いい」
これが水野さんの表情から溢れ出していたように思えた。
脱力してるんだけど、凛とした表情。
以前の私
美緒という人
今の私
あのころのあずみと、亡くなってしまった少年の寂しさ。
これまでをひとつひとつゆっくり数えてるかのような静けさ。
なんでも分かった気になってたあの頃の自分
「なんにも分かっていなかった」
それに気づいたときの恐ろしさも時に込み上げるような揺らぎまで私には感じられて。
うわー…って、腹の底から感動したのでした。
そしてまた仲里依紗さんの演技ね。
怖かった・・・。
旅の途中でちょいちょい殺人しながらも捕まらない不思議さはあるんだけど、正直、「早く捕まってくんないかな」とずっと思ってた。
見ててこんなイライラさせるって、でも怒り狂って表情が大きくゆがんでも、仲さんはそんなことより「美緒」の悲しみと怒りを演じきっている…!というそのお姿に、やっぱり揺さぶられたのです。
幼い頃に両親から虐待を受けていた美緒。
全身に冷水かけられ続けても、泣くことしかできなかった。
そこから生まれた狂気を、台本読んで自分の人生みたいに演じるなんて、役者さんは本当にすごいなとただただ感心です。
自分がおかしくなるというギリギリでやってたんじゃないだろうかと案じるほどに。
水野美紀さんと仲里依紗さんのホロスコープを重ねてみました。
「逃げる女」というタイトルどおりみたいに、活動宮に星が集中しています。
蟹座・天秤座・山羊座で大まかなTスクエアが形成されてますね。
水野さんは太陽蟹座で、仲さんは太陽天秤座。
太陽星座同士がスクエアだと、ドラマのホロスコープ分析してると特に「道がいずれ違ってしまう」という展開になるように思います。
目的がそもそも違う。
でも行動タイプは共通しているので、「逃げる」という行動においては気が合ってしまったというか。
気になったのは、仲さんの天秤座太陽と水野さんの天秤座の月がコンジャンクションとなってるとこ。
出生時間がわからないので、もしかしたら水野さんの月は仲さんの太陽と重なることはないかもしれないけども、でも近くには天王星があったり、仲さんの火星があったり。
物語の中で仲さん演じる美緒は、梨江子のことを「おねえさん」と読んでずーっとくっついてくるんだけど、梨江子の中に「お母さん」を見てたのかな、ってちらっと思いました。
本当はお母さんに寄り添いたかった。
梨江子も梨江子で、逮捕前は児童養護施設の「エリート」職員として、「やれてた」つもりでいたけど、そこには本当に宿すべき何かが大きく欠落してたみたいで。
けども、美緒との出会いで本当の母性なのか愛なのか、「誰かを愛おしく思う」ということをどんどん感じ始める。
「あなたって人の嫌がることをするのが得意なのね」
「私も人の嫌がることをするのが得意になったみたい」
ドラマの中でよく互いに言ってたセリフ。
スクエアの相手って、時に自分の邪魔をしてくるような不快感を感じます。
で、それってきっと自分に必要な「邪魔」なのかなって。
何かの局面を乗り越えさせるために、「邪魔された」って被害者意識持ってる自分こそが引き寄せるんじゃないかな。
スクエアの角度は、乗り越えた分だけステージが上がるような克服感があります。
確実に大変なんだけど、確実に良い景色を拝める。
スクエアの角度でも、それが異性でも同性でも、相手のこととっても好きってことはよくあること。
好きであればあるほどきっとぶつかるのだし、ぶつかったほうがドラマチックな気がします。
ぶつかることを避けている限り、相手はいつまでたっても「嫌いな人」「嫌いになりそうな人(だから近づかないし緊張する)」「邪魔してくる人」
水野さんは太陽と冥王星がスクエア。
いっつも大きくてどうしようもないものと戦ってボロボロになってるイメージです。
いや、ボロボロになってるその姿は決して「負け」なんかじゃなくって、でも社会は「負け」という判断を下すのかもしれないけど、「それでも私は挑んだ」という事実にいつでも誇りと疲労感と安堵の表情を最後に浮かべるような、そんな役が多いと感じます。
また今回のドラマ、そんな疲れた表情とお洋服の色合いが本当によくマッチしてて。
赤いセーターにえんじのストールという組み合わせ、あのショートカットに…。
水野美紀さんにうっとりし通しだったのでした…。