昨日8/16(金)にNHKで放送されていた
「にっぽんの芸能」
市川團十郎さん・中村勘三郎さん特集でした。
去年、平成中村座で見た中村勘三郎さんにすっかり魅せられ、
日本に、世の中に
こんなにシンプルに人を笑わせる役者さんがいたとは!!
という感動と喜びとLOVEのようなものを抱えて帰ったあの日のことは忘れられません。
そしてもう一度訪れた平成中村座。
おなかの底から
「かんざぶろうさんっ!!」
と叫びたいくらい胸がいっぱいになりました。
團十郎さんの舞台は観に行くことがかないませんでした。
でも、TVで拝見すると
その「凛」とした雰囲気は
勘三郎さんの雰囲気ともまた違っていて
涙をうっすら浮かべるその演技には
物語の全体像もわからないのに泣けてしまう。
小泉英明さんという脳科学者の方が評されていた團十郎さん像。
「すっと晴れ渡った青空の富士山の姿」
私は團十郎さんの舞台はTVでもそれほどお見かけしてこなかったのだけど、その表現に涙がにじみました。
「本当にそう」
と100%のど真ん中感で入ってきたから。
「助六」での勘三郎さん。
このコミカルさ!
そうそう、これ!
とまた泣けてくる。
そして勘三郎さんの前に立ちはだかって
「股をくぐれ」
と勘三郎さんを見下ろす團十郎さんはまさしく富士山の威厳!
「シェーッ!」
「もひとつおまけにシェーッ!」
これこれ…この勘三郎さん。
この「シェーッ!」でね、今時そうそう笑いを巻き起こせるものでもないと思うのです。
「なんでげす!?
だめでげすよ!
股をくぐれなんて…」
品が悪そうなのにとっても気品に満ちている。
「おほん」
股くぐりへいざ!という前に軽く気合いを入れる通人・勘三郎さん。
その軽さがとってもくすぐる!
そしていざくぐろうとするときの恍惚の表情!
観に行っていたならば、
ぶぶーっと吹き出してしまってただろうなぁ…。
股をくぐるまでに、ずーっと勘三郎さんのおふざけというか、挑発というか、コミカルショーが続いてて、必死で笑いをこらえる團十郎さんはそれでも1ミリも威厳も品格も崩さない。
お次に立ちはだかるのは尾上菊五郎さん。
「シェーッ!
なんでげす?
またまた、またをくぐれでげす?」
こんな面白いコント、もうあまりお目見えしないよなぁ。
笑いというのは、血のにじむような努力や研鑽や研究や献身から、自然発光的に気品や色気と相まって生み出されるものなのかな。
きっと面白いことを考えた人が誰でもできるわけではなくて、お客さんとの間に流れる空気を1平方センチメートルも無駄にしないというような献身をとても感じた。
それにしても
團十郎さん・菊五郎さん。
軽口たたく勘三郎さんを
「じっ・・・」
とただ見つめるだけ。
ただ仁王立ち。
その気品と威厳に色気まで漂うのだから、あふれ出る人間性そのものに胸打たれる。
へらへらしてる通人を
「おい・・」
とも言わぬけど見下ろすその姿は
神のようです。
仁王様だ。
菊五郎さんの股もくぐり終え
花道で語る勘三郎さん。
建て替え前の歌舞伎座での「さよなら公演」にて。
本当にこの方の客席に向かっての語らいは、高い舞台にいる方なのに、不思議と、勘三郎さん中心にみんなで椅子持ってきて話聞いてるみたいな、
段差の感じさせない語らいで。
「しばしの間、歌舞伎座からは
さよな~ら~」
「おほん」
風吹くように花道駆け抜けた
勘三郎さん。
「おほん」に
ユーモアや寂しさや、
あとやっぱり色気とか
たくさんのものが込められた
その咳払いは、
まさに勘三郎さんそのもののような
粋な締めくくりの合図だったのでした。