先週の「anone」を録画でやっと見ました。
必ずどこかぎゅっ…とつらいんだけど、今回はとりわけつらかった。
つらいシーンが多かったです。
坂元裕二さんの脚本って、ちょっとクセありますよね。
「カルテット」も、私は息呑んで見てましたが、「もう見るのやめた」という人も多い。「anone」でもそういう声よく聞きます。
そりゃ何にしたってありうる動向だけど、坂元裕二さんのドラマは、「見るのやめる」にしてはもったいないほど、今どき珍しい要素が盛り込まれていて、今のこの時代にああいう「平和・日常」「幸・不幸」「貧困・犯罪」を際立たせる視点に、なぜか救いを感じたりします。
「anone」は、田中裕子さんと広瀬すずさんのドラマが一応メインではありますが、同居人の阿部サダヲさん・小林聡美さんは決して引き立て役として居るわけではない。
サイドストーリーにしても密度が濃すぎる。
心の余白にずぽっと入ってくる、ダイレクトに胸をつかまれるような演技をされるお2人なのです。
2人が出会ったのはそもそも世の中に絶望して「一緒に死にませんか?」というところがきっかけだったけど、「金さえあれば」というところにほぼ同時に目を輝かせ、生への執着取り戻した2人は、どういうわけかいろいろスリルを経て、亜乃音さんとハリカと4人で暮らしてる。
これまでの人生で初めてみたいな平和と家族愛を、一晩一晩大事に抱えながら過ごす4人。
この時間は長く続かないと知っているかのように。
それで阿部さん演じる持本は、余命宣告受けてるのですね。確か半年。
誰もそのことを知らない。
小林聡美さん演じる青羽さんは言う。
「これまで願いなんて叶ったことないんだけど、今度は叶いそうな気がするのよね。今度こそ大事な人・持本さんとずっと一緒にいられそうな」
そのときの阿部さんの「ぎくっ」とした表情と、安息にすっかり心ゆだねてる青羽さんの表情との対比に泣けた・・・
青羽さんの願い。「やっぱり叶わなかった」って表情の青羽さんのそう遠くない未来。
今見てる映像以外のものがぐっと胸に迫ってきて、むせび泣き。
それはまさに「余白に泣かされた」という感じでした。
この間の回は、「愛しているがゆえの嘘」がテーマのよう。
これがつらかったのです。
そしてやっぱり阿部・小林コンビ。
お互いもう相思相愛だとわかってる2人。
しかも青羽さんから「大事な人」ってさりげなく伝えられた翌日。
持本は主犯格の瑛太と逃げることを決める。
青羽さんにも「逃げますんで」と告げる。
「ずっと一緒にいられそうとか、僕に願いを託されても重いっていうか…」
青羽さんは「はぁぁ!?」ってブチ切れながら、「いつか温泉みんなで行きたいって言ってたじゃない!」とか、態度急変おかしいじゃんって持本を責める責める。
そこで阿部さんは何言われても、
「知りません。それ、知りません…」
って言うとこがまたツボでした。
阿部さんの演技も面白かったけど、自分を振り返ってみて急に心変わりしたようなヤツっていうのが大体「知りません、わかりません」って、わざとらしいほどの記憶喪失者だったってとこの発見。
持本のやましさは、でも「愛」あるがゆえ。
しかしまた泣けたのが、やっぱり青羽さんが一枚上手だったということ。
青羽さんは持本の「愛ゆえ」を見抜いた!
背中向けた持本を抱きしめて、「もう長くないの?」「絶対看取るから」って、その願いは叶えさせろよという力強さ。
さすがに持本も溶けちゃったみたい。
な、演技。
阿部さんは本当泣かす…。
広瀬すずちゃんはもちろん天才少女だと思う。
あの涙の演技とか。
が、ちょっとクセがある。ちょっと。
猫、嫌いな人も世の中にはいるよね、というような。
目に見えないのに不思議なんだけど、五感が何かを感じたりするんですね。
そのクセというかトゲを優しくグルーミングするのが田中裕子さん。
広瀬さん演じるハリカの何もかもに相好崩すあの微笑み。
笑ってても泣いてても怒ってても目を細めていらっしゃる田中さん。色気が…。
なぜあの疲れきったコミカルさから色気まであふれてるのでしょう。
ここにも人を震わせる「余白」があって。
生活感と過去の悲哀さを泣けるほど想像させる。
あれ、本当不思議なドラマです。
「ミイラとりがミイラになる」ってとこの可笑しさとか。
火野正平さんと瑛太さん、首絞められて・首絞めて…の2人が同じこたつで温まるとか(笑)
犯罪風景ってこういうものかもって、その地続きに笑ってる場合じゃないんだろうけど。
キリがないなぁ。
来週・最終回も楽しみです。