ドラマ「夫のちんぽが入らない」

昨日の地震は大きかったですね。
あまりの揺れに「東日本大震災以来…」とやはり思いました。
揺れ方や長さがとてもよく似てた。10年前なのに、怖さはすぐ蘇ってくるものです。

 

それでよく眠れなかったからか、最近休日となると散歩に行こうと心がけてた気分がすっかりくじかれてしまった。
だからNetflixで「夫のちんぽが入らない」を最終回まで一気に見ました。
だからってのも変だけど、このドラマが回を追うごとにどんよりしてくるから、今日の気分とぴったりハマった。
6話が「キモっ」のピークで、8話はホラーかと思うようなヒヤヒヤ、そして9話で泣く。いや、このドラマの後半は感情が高ぶります。

本のことはわかりません。このドラマの雰囲気にとても惹かれました。
フジのドラマなのにテレ東深夜っぽい。「恋のツキ」の絶望感と優しさにとてもよく似てます。
TV版は結構カットされてるので、Netflixをお勧めしますよ。なかなかきわどいシーンも多いですしね。
主役の石橋菜津美さん、体当たりです。どこから見ても普通っぽいのに、普通じゃない美しさを放ってるんですよね。


テレビドガッチより)

最初は2人だけの物語。
2人が知り合ってすぐに恋して、でも入らない…そして結婚。
私たち幸せねってずんずん突き進めるのは、就職前までなのかもしれません。
就職して結婚すると「社会」が立ちはだかってくる。
社会。それは「普通」を突きつけられること。

大人になってから、人は(特にこの国の女性は)ずっと長いこと「自分が悪いんだ」と思って生きる。そんな時間がどれだけ続くだろうと思います。
「自分が悪いわけじゃないのかも」と気づくまで、どういう道をたどって生きるんでしょう。どうやってみんな解決策や折り合えるポイントを見出すのでしょうね。

久美子と研一は教師。
いろんな子どもを見てきて、いろんな親とも教師とも触れ合う。
研一は教師としての確固たるポリシーがあって、職場で浮いてても自分のやり方で生徒と信頼関係を築く。
久美子は問題クラスの担当になってから、うまくいかない。
周りの教師は「親の問題だ」と見なすし、研一は「まとめられない教師が悪い」と言う。
今までなんでも研一に同意できてたし、研一は時に理屈っぽいけど理想の相談相手。
久美子が作ったごはんをおいしいおいしいと笑顔で食べてくれるし、夜も「無理しなくていい。抱き合って寝るだけでもいいんだ」と優しく抱きしめてくれる夫。
「私は幸せだ」

このドラマがすごいのは、これでもかと「幸福」を見せられるほどに「絶対これ崩れるな」とこちら側にわかる展開です。
「来る…きっと来る…」
不幸が忍び寄るその怖さったらないけど、それがおもしろいです。
私にとってもあんなに素敵だった研一・中村蒼さんが、いつの間にか正論野郎になっていて、「うっせぇな…」と思い始めて間もなく「爆乳ガール」のスタンプカードが久美子によって発見されたりする。3日置きくらいに行っている。

そのタイミングで久美子のクラスがいよいよ学級崩壊となり、子どもたちにもナメられ、仕事もうまくいかないし入らないし…で誰にも打ち明けられない悩みをついにネット掲示板に書き込むのですね。そしたら「会って相談に乗りますよ」という男たちが湧いて出てくる。求められるままに寝る久美子。
またその最初の男が松尾諭さん・・うわぁぁ・・ですよ。
夫以外のものが入ってしまったら、どんどん堕落していく久美子。
落合モトキさんとの出会いは、一見「救ってくれる人かな?」とか期待した分めちゃ怖かったしキモかったです。
しかし私が「ホラー」と感じたのは、浜野謙太さんの回。
「あ、浜野さんだ」とわかってからずーっと怖かった。だってあんなに下心っぽい表情の方います?
もちろん浜野さんもそう演じてらっしゃるはずで、だからうまいんだけど、絶対久美子、逃げてね!!!とずーっと思ってた。

またこのドラマが結構ツッコミどころ満載で、もちろん狙ってるものもあると思う。
研一が家を出てしまって茫然自失の久美子が泣きながらきゅうりとちくわ食べてるとか、(スーパーで研一を思い出しちゃったんだろうな…)余計な想像力かきたてられるし、なんたって浜野さんなんですよ。
久美子のいとこ、葬式で久々再会。離婚して親権取られた傷心の男。そいつが言う。
「DTこじらせてる男ってやっぱやばいじゃん」(←お前もっとやばいかんな!)

だけどツッコミすらできなかったのが、久美子と研一の両親の言い分。
「子どもを作る気がないとか、あんた何言ってんの!?」
「もう一度よく考え直しなさい」
ここに書けないいろんな言葉が久美子と研一に降り注がれます。
書けないほどひどいことばかりなのに、世の中ではまだそれが普通であるということ。
私たちは確実にこの親のような価値観の中で育ってきて、それでどうして自由や個性を謳歌できるだろう。
母親に愛された感覚がないという久美子は、その母親に「子どもが生まれる喜びをあんたにも味わって欲しいのよ」と言われて、耳を疑う表情をする。
理屈っぽい研一は、「自分たち夫婦は子どもを作らない」と決めて宣言しても、妊娠中の妹のおなかに手を触れれば理屈を超えた何かにどうしようもなく手を伸ばしたくなる。
何を言っても何を言っても何を言っても「負け惜しみ」と言われる生き方を、自分は選んでいる。選んだつもりはなくても、そう生きてしまっている。
そういう悲しみが、ドラマの後半にたっぷり詰まってるのです。


とれたてフジテレビより)

この2人が導き出した答えは、いわば理屈なのかもしれません。
でも理屈を打ち立てなければ超えられないことがある。
超えようとする、その状態が一番幸福といえるんじゃないでしょうかね。
生きるとは良くも悪くも1人でも2人だけでもできなくて、「社会」との関わり必須なのですね。
そうはいっても選択できるのが今の時代のいいところかもしれません。
自分たちは2人でやっていくんです、とか、アドバイスありがとう、でも自分はこれでいいんです、とか。
ただ、そう決めたり宣言したりする勇気がなかなか育たない!
でもこの物語が話題になるということは、夫婦や家族のあり方がとてもいい方向に変わりつつある現代ということでしょうね。

あと「かわいそう」って何?ということが突きつけられます。
かわいそうだから愛したの?ずっとかわいそうと思われてた?
時に男は「かわいそう」という図式から暴力的に逃れる。研一ですらも。
「かわいそう」で解決することってほんと、なんもないかもですね。

 

出演者が何気に豪華です。
尾野真千子さんや江口のりこさんまで。
江口さん、出演すごい短かったけどさすが!の表情でした(笑)
研一の父親が国広富之さんというね。
研一が風俗で思わず涙したシーンからも、「ふぞろいの林檎たち」を思い出しちゃいました。

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