田中邦衛さん追悼として、「北の国から’87初恋」が放送されましたね。
(北の国からFODより)
なぜ’87初恋か。
やっぱり「泥の指紋がついたお札」、これが北の国から最大の感動シーンだからでしょうか。
しかもそれを突き返したのが今は亡き古尾谷雅人さんというね。
あと、横山めぐみさん演じる「れいちゃん」の美しさ。
尾崎豊「I LOVE YOU」
この3大ポイントがある’87初恋は、局の満場一致で支持を集めたことでしょうね。
「’89帰郷」もぜひ放送してほしいです。螢ちゃんの恋。
そして純の泥のついたお札が不良グループに盗まれるというショッキングな展開。
北の国からは大体どれにも残酷すぎるシーンがありますが、’87初恋が令和の再放送には妥当なんでしょうかね。でも結構カットされてたらしいです。よく気がつきませんでしたが。
私は少し前にツイッターを再開したのですが、たまらずにあれこれツイートしたら2つがバズるという。北の国からファンの興奮送受信の嬉しさを感じた昨日でした。
そんで「これ、今の人に見てほしいなぁ」というツイートが多く、たぶん今回の視聴者は元々の北の国からファンがほとんどと見た。
「今の人に見てほしい」という発想がすでにジジくさく、そういうのを今の人は露骨に忌避しますからね。
私も同じ思いを抱くからわかる。今の人にとってはおもしろくないんですよ。倍速世代。
それでもおもしろがってくれたら何よりです。(←未練がましい)
しかし田中邦衛さん演じる五郎が、いくら酔っ払っていたとはいえ、れいちゃんに「お前のおやじに言っとけ!」って絡むのはあんまりだと思いました。
あと純の手紙読んじゃったり、「女の尻追っかけてるって噂だぞ…」って言ったり。「汚いよ!いやらしいよ!」って純から見下されてもしょうがないです。
螢ちゃんも「あぁ父さん…」って内心思ってるはずなんだけど、五郎さんの誕生日カードに「螢は父さんのことが大好きです」と書いてあげるいじましさ。
あの頃の五郎さんの唯一の救いは螢だったので、もらったプレゼントを即開けて手紙読んで、老眼鏡に愛を感じまくる。それで心が穏やかになったと思いきや、「純、話がある」と、東京行きを自分に隠してたことを責めるのですね。なぜ螢の手紙で心を落ち着けられなかったんだろか。
でもあれこそが五郎さんか。
ありがちな父親といえば、カッとなったら娘のプレゼントすらほっぽり出して息子に向かっていく、そういうものかもしれませんが、五郎さんは螢からのプレゼントに「わ、嬉し…」と立ち止まってしまった。
それに最近の俺ときたら、なんにもアップデートされてないことも自覚してる。
「こんな父さんにくれるのかい…?」と、中ちゃんから聞いた話のショックを一度和らげたかったのかもしれない。
というか草太なんですよ。
「父さんたちに内緒にしてほしい」と純は言ったのに、地井さん演じる中ちゃん(中畑のおじさん)に話しちゃった。
草太がそういう男ってことはファンの多くが知っているけども。
新彼女・美保純さんがまた麓郷になんともなじんだヤンキーっぽさ。
草太とキスしたあとのさっぱり具合とかかっこよかったです。
草太も草太ですっきりした顔して、「じゃぁな!」って。ああいう2人こそ結婚するものなのかな。
アイコは雪子と正反対という感じ。雪子はすぐ意味を問う。「どして?」って。
雪子にお熱の草太はそれが嬉しくて、「どしてって、おらが雪ちゃんを好きだからだべ」って言いたい。そんで雪子に「うふふっ」って笑ってほしい。
草太がアイコやつららちゃんに求めたのはそういうことではなかった(たぶん)。
「よし、おらと一緒になんべ!」ってなノリであれこれ実現できるライトさがよかったんでしょうね。
雪子はそこでも「どして?」って言う女。東京のインテリ女はすぐとぼけるんだから。
とかいって私は竹下景子さん演じるゆっこおばさんがとても好きなのです。北の国から女性陣で一番好きかも。
もちろん螢ちゃん大好きなんだけど、’95秘密以降のやさぐれ具合は結構ショックでした。
でもそりゃそうです、あんなに抑制的な螢ちゃん。「父さんのそばにいる(いなくちゃならない)」という誓いを守りきれなくなり、まるで兄や大人への復讐かのように行方をくらましたりもする。
’87初恋でも、れいちゃんと一緒に東京に行きたがる純を「そんなこと言うの今よして!」ってきつくなじる。抱えきれない思いを自覚した瞬間だったでしょうか。
でも旅立っていく純に、「れいちゃんの居場所わかったらすぐ連絡するから!」って走りながら告げると!
螢ちゃんは熱く義理堅い子なのです。
螢ちゃんの涙。美しかったな。けど「手紙書いてね、毎週」って確約取る螢ちゃんには凄みがありました。
チンタの父親がレオナルド熊さん。
れいちゃんの父親から村八分にされそうになってたのに、その大里の家が大変だぞ!行くべ!と五郎さんに声かけに来てましたね。
そんで五郎さんに「あんた、人がよすぎだろ!!」と怒られるという。五郎さんの珍しいツッコミです。
チンタも純にれいちゃんをとられてもおとなしいし、親は親でお人好しだってんで、この似た者親子はあえて倉本聰さんがそう設定したんでしょうかね。
それにしてもれいちゃんのはち切れそうな美しさです。
下着姿であんなに色っぽく恥じらったことないよ。あそこにヒントがあったのに何やってたんだろな。
れいちゃんの「怖いの…」っていうささやきは’95秘密まで続く必殺技ですが、これなら今後の人生で一度くらい繰り出せるかもしれません。
この時の「怖い…」は「大胆な自分が怖い」でした。by大里れい
田中邦衛さんが亡くなられたことはとても悲しいです。
でも吉岡秀隆さんがコメントされてたように、いつかはこういう日が…という覚悟もどこかでありました。
改めて田中邦衛さんを見つめると、五郎さんのシーンは結構長回しなんですよね。
だから五郎さんの繊細さが痛いほど伝わった。あんなに喧嘩して怒っても、春にはもうわだかまりも解けて純を笑顔で見送れるようになる心境とか。親になったことない私でも、なぜか心の経過が感じられました。
純を乗せたトラックを追いかける2人。
五郎さん足滑らせるとことかうまいなぁぁ!と。丸太小屋を完成させた父さんは、もう足腰弱くなってきてんですね…。
五郎「話をすり替えるな!!」
純「すり替えてるのは父さんだろぉぉ!」
ここ、すごい悲しかった。
どっちがすり替えてたの?ってことより、息子に「すり替わってんぞ」と指摘されることのショック。
もみ合いになれば純のほうが力強くなってるし、五郎さんが挫折した風力発電も完成させた。
ここまでずっと抗ってトンがってたのに、この争いを境にして五郎さんは一気に老け込んだ気もします。
それでも富良野の厳しい冬の中で電気つけたり水引いたり家建てたり、無から多くを生み出す父さんは純と螢の自慢でした。
田中邦衛さんの繊細さは、人の心を揺さぶるパワーがありますね。ほんっとに仕草が細かくて、他の誰とも違う方。ご冥福をお祈りいたします。
(BSフジ北の国からHPより)