「北の国から」って、10人いれば10人が大好きなドラマだと思ってた。
けど、職場で一人熱く「北の国から」について語っていたら、誰もついてこなかった。
そこにいた5人は、誰もほとんど見たことがないという衝撃の事実…。
みんな私と同世代か少し上なのに。
あれでしょ、2時間スペシャルものなら見てたでしょ?
「さあ・・・」
けど、10人いれば10人が、主役は田中邦衛さんで、純が吉岡秀隆さん、蛍が中嶋朋子さんの物語であるということは知っているのに。
いや、100人単位で知ってるはず。
しかも、もし北の国からテストがあるならば、舞台はどこかという設問には「北海道富良野」と、道名以下も全員書けるはず。
主題歌は誰が歌っているかだって全員書けるだろうし、蛍がキタキツネを呼ぶ時の掛け声だって、みんなパーフェクトな解答を知ってるはず!!
なのになぜみんな見たことないと言うの?
その5人のうちの1人は、「だってぇー、暗い話嫌いなんですよぉー」とのこと。
暗いって知ってるじゃねーか!!
でも、本当にこのドラマが好きな人なら、決して暗くなんかないことはよく知ってるはず。
だってだって、田中邦衛さんの愛らしさだけで、もうコミカルな雰囲気が漂ってるし、それに子どもたちの無邪気なやり取りは毎回ある。
なんたって草太兄ちゃんがいつでも「辛気臭い顔してんじゃねーべ!」ってな感じで明るさをもたらしてくれます。
そんでもうたまらないのが5話。
確かにそれまでは純の心の複雑さの独白が、純は素直にまっすぐ育つだろうか・・と心配な気持ちにさせましたが、第5話では恋に悩む草太兄ちゃんの心をもてあそぶ純の悪い顔が最高でした。
北海道での撮影はさぞかし大変だろうな…と、当時の吉岡秀隆さんに思いを馳せつつ見ていますが、あんな表情を見せてくれたならもうほっとして…。
そのあと大事な愛あふれるシーンでまた草太兄ちゃんと純が向き合うのですが、純くんが草太兄ちゃんを見つめるその視線は、演技以上のものに思えました。
あんなかっこいい岩城さんという大人とお仕事できる純くんこと吉岡少年も、素敵な男性になるでしょう・なってますものね…と時空を超えた不思議な感慨がありましたよ。
それにしても吉岡秀隆さんはものすごい演技です。
もちろん蛍ちゃん役の中嶋朋子さんも。
あの年頃のちょっとしたケンカや兄・妹を許す気持ちとか、「お兄ちゃん、蛍怒ってないよ…」とか、何気ない子どものやり取りなのに涙を誘われるのです。
きょうだいや子どもがいる人でなければ描けないのでは…と思うほど。
それに、純くんのお母さんへの複雑な気持ち、よく知らない大人への警戒感、恥ずかしいときの顔の上気とか、吉岡少年のみずみずしさは、「演技がとっても上手」な平成の子役とはやっぱ別格だなぁと思ってしまいました。
第4話は純くんの独白がなんと10分以上。
表情はさることながら、独白の声がとても胸に迫るのです。
あぁそれにしても、蛍ちゃんが大人の都合の悪すぎる情景を見たときの傷ついた表情。
「…でも蛍、だいじょうぶ」
こんなセリフを本当に言ったわけではありませんが、少しうつむきながらいろんな事情を引き受けた蛍ちゃんがずいぶん大きく見えます。
そして雪子おばさんがまた、子どもの髪のほつれを直したり、抱きしめたり、子どもの心の機微を本当に大切にするすてきな東京レディーなのですね。
明るくハキハキしてるけど、男性を立て、不便すぎる家事の一切を前向きにこなし、自分の子どもじゃないのに愛情をたっぷりそそいで、自分の旦那じゃないのに五郎さんに尽くし。
見習いたいものです。
北の国からを見るたびに毎回感想文を書くつもりってわけではないですが、あまりに毎回心震わせられるので、こちらの何かも刺激されてつい書き残しておきたくなります。
けど、北の国からを見た夜は心が潤います。
石の湯たんぽを抱いてるように、あったかくなるのです。