若手が自分を「おばさん」と言うとき

ーやっぱり自分より年下の女性が自分を「おばさん」と言うのには、なんかガクッとくるというか、悲しくなりますよね。
あなたがおばさんなら、私は何なんだって…ー


インタビュー調で言ってみたけど誰からもマイクを向けられてはいない。
今読んでる益田ミリさんの漫画で40代の嘆きが描かれてて、感じたこと。
30代・40代で自分を「おばさん」と言うその心は何なんだろう。
誰にどう思われたくて言っているのか。
どこかへのアピールにしては、何の誇りも感じられない。
自分を下げてるように見える、その心は?


でも少し思い当たる。
若手が自分を「おばさん」と呼ぶ、その魂胆。
「おばさんの中の最年少」であろうとするんじゃないか。
「わたし、おばさんだと認めちゃいます」みたいな顔して、おばさん界のいたいけな新人であろうとする。
これはタチ悪いですよ。
真性のおばさん界隈を荒らしにきている。
あなたがおばさんなら自分は何なんだと、おばさんの自尊心が揺らぎかねない。
肌がまだ水をはじく人を招き入れる罪悪感を考えたことはあるのか?
若手の海へお帰んなさいと、良いおばさんはきっと突き返すはず。


ところで私は49だけど、自分を大しておばさんと思ってないんだ。
人からどう見えようが、「いや、あなたは正真正銘の…」と諭しにかかられようが、「私はもうおばさん…」と諦め顔で言うつもりはない。
こういう往生際の悪いババァになりたくないから、若手は潔くおばさんを名乗るのかもしれない。


逆パターンもある。
60近い人に「40になったって?もうおばさんの仲間入りね!」と言われた。
こんなに嬉しくない歓迎会はあるだろうか。
彼女は「老眼で文字が見えない、誰か…」とキョロキョロしつつ、言う。
「ここには30以下の子いないからダメか」

そこにいた40女がコントのように右肩を落とす。
そんで、見せてみろと一斉に書類をのぞき込む。
「パ・リ!」
バリじゃなくて、パ!

なんか、アラ60の彼女は読めてた説もあって。
おばさん界のトップでありたい、なんてこともあるんだろうか。
あるとしたら、「君臨」みたいなマウントの一種?

でもそれは分かる。
おばさんだって威厳を保ちたい。
ただ歳を重ねてきたわけじゃないんだと。
なのに女は年齢で勝手に価値を語られる。
価値がないだの、老けただの。
歩んできた人生が、表面的なことでパーにされてしまうような。
そんなムードが女を自虐に向かわせる。
自覚してないババァより、前のめりで下げとくほうがイタくないはずと。

部屋で1人下げてればいいじゃん。
なのにわざわざ聞こえるように自虐する。
「私もう若くないんです」と。
自分の周りに無数の年配者がいることを知ってか知らずか。

いや、わかっているだろう。
(そんなことないですよ。あの人より全然若いですよ)
あえて声に出さなくても通じ合う目配せ。
(いえいえ、そんな…)
謙虚に首を振りつつ、なんだかんだわかってる。
まだおばさんでもない私。
「でも言ってみた」ってやつ。
これ平均何歳くらいでみんなやるんだろう。



「もう32になってしまった」とか見かけるのは悲しい。
「40代になるの怖い、死にたい」とかも見かけた。
いろんな事情でそう言ってるとは思うけど、年齢を重ねるごとに「終わった感」を醸すのはやめてほしいんだ、年下諸君。
この言い方もムサいだろうけど、ほかのワードが浮かばなかった。

私は今もあがくけど、都合よくおばさんの振る舞いをすることもある。
「おばさん」と下っぽく自分を下げるのが礼儀、みたいに思って自称する人もいるだろうけど、謙遜じゃなく温かみをもってしんから言える適齢期はある。
「価値がなくなる」という危機感を表す代表ワードが「おばさん」として、そんなことをわざわざ言わなきゃいけない時代のことをもっと考えたい。

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