「55歳からのハローライフ」

何かに「熱く感動した!」という体験がないと、なかなか綴る気力も湧いてこないものです。

今クールでハマれそうなドラマがなかったので寂しい思いを抱えていたのですが、いつまでも胸にこびりつくように残ってるドラマがありました。
「55歳からのハローライフ」

特に最終話のイッセー尾形さんの回!

予告で、イッセーさんが出ると知った時から最終話を心待ちにしていました。
そういえば、私は15年くらい前はイッセー尾形さん大好きで、よく番組も録画したりしてたってこと忘れてた。
あのころはイッセーさんの一人芝居をよくTVでやってたんですよね。

ドラマを見ながら「そうそう!これこれ!」と、
普通の、普通よりちょっと・かなりくたびれたオッサンの、ふっつーの仕草がまたうまい!
そういう人の奥さんは必ず気が強くて、賢い。
「参りました」
常にそういうポーズのイッセー尾形さんが懐かしすぎて愛らしすぎて、もうなんか終始泣きそうな気持ちでドラマ観てました。
また尾形さん、ぎっくり腰になっちゃってへろへろでよれよれのパジャマ姿の演技が、ただ動けなくて寝てるだけなのに笑かせる!
小さい頃、父親のパジャマ姿の股間あたりのもたつきが妙に気になって、
でもあのもたつきこそが父親だったよなぁとういことまで思い返されました。

ドラマでは、中学生の時に転校してきた火野正平さんと工事現場のアルバイト中に再会するのだけど、この2人が相当なオッサンなのに、どちらも中学生の時の気持ちを泉みたいに清くあふれさせて、ちらりピュアさを垣間見せるオッサンたち。
「男ってバカ…」
何度こんなふうに思ったかな。

 

リリー・フランキーさんの役も松尾スズキさんの役も、家をステキなインテリアで仕上げて、アンティークのものそろえて、部屋着もなんだかオシャレで、この間まで働いてたとこではバリバリやってたんだぞ、俺は…
ってことに浸って満足してるオッサン。
そんな時に飲むコーヒーは最高で…ってか?

リリーさんの奥さん役の戸田恵子さんは、夫の満悦さを摘み取らずに愛なんだか情けなんだかの慈愛の心で、そのピュアさを見守ってるようでした。ほどよく警戒心も抱きながら。

松尾さんの奥さん役の風吹ジュンさんは、「そんなんじゃないのよ!」と、ずっと長いことイライラを胸にためていた。
で、あるとき爆発しちゃうんだけど。
犬の毛を汚いもののように疎んじる夫こそ、もっと不快なものを撒き散らしてんだと言わんばかりに、全身に軽蔑感込めて。

原田美枝子さんに離婚突きつけられた旦那も、結婚相談所で出会った男たちも、女をとっかえひっかえしてきたトラック運転手の小林薫さんも、男たちは一体何を人生で一番大切なものに据えたのかな…と、その空虚感ばかりが感じられてしょうがありませんでした。

イッセー尾形さんが演じられていた役は、もっとつましいオッサン。
見栄やステイタスなど求める余裕もなく、ただ実直に。
中学卒業以来に再会した友人役の火野正平さんは、ホームレス同然の人生。
男性は、真面目に真面目に働いてきても、ふとしたきっかけで家族や住む場所や安穏も失ってしまうような、そんなギリギリの生き方しかできないものだろうか…。
「バカ…」と思いながらも性別が違うということで関係のない人生とはとても思えず、父を振り返るような、これから出会うであろう配偶者に思いを馳せるような、いつしかの前世で男性だった時代がほのかに感じられてくるような、愛しさとせつなさと・・
えっと…とにかく哀しさが込み上げてきて、本当に泣けたのでした。

見渡せば、男の人の生き方が急に不安定なものに思えてくるのはどうしたことだろう。
なんか、日本の男性の90%は全く関心も存在も知らない分野があるように思えて。
うまく言葉では言えないのだけど。
私はここ数年いろんな分野の講座に顔を出しているけど、男性率は1割にも満たない。
なぜなら仕事が大事だから。
女だって有給取って来てるのだけど。

女性はあるとき気づくのだと思う。
それもうまく言葉で言えないのだけど、「自分」というものは思った以上に深くて深くて、「自分」を知れたら時空を超えた宇宙レベルの何かにもつながるんじゃないかってことを。
男性は「自分」を知る時間なんて必要ないのかな。
そんなヒマじゃねんだって?

55歳の男性たちの姿を見ていたら、足元グラグラで、
体面や体裁ばかり「人より良質なもの」で繕ってばかりで、コーヒータイムは楽しそうにも虚しそうにも見える。

 

イッセー尾形さんはこのドラマのあと「歴史秘話ヒストリア」で、与謝蕪村の役を演じられてましたね。
庶民的だけど、芸術的でしなやかな役!
「55歳からのハローライフ」で、つましいオッサンも最後は「夢」を思い出した爽やかな表情に私も救われた心地がしたけど、与謝蕪村のしなやかさと充実感は、さらに男性のもがきを挽回してくれたように感じられて、勝手にほっとしてみたりしたのでした。

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