ヤヌスとアリエス感嘆録

今、TOKYO MXで月曜深夜に「ヤヌスの鏡」が再放送されています。
火曜日は「アリエスの乙女たち」で、これも録画して見てます。

この時間帯の帯って、「もう誰も愛さない」とか「花嫁衣裳は誰が着る」とか、どろどろのドラマばかり再放送してるのですよね。
毎日見たい気もするけど、DVDがパンクするので月・火の2つにとどめてます。

「アリエス」は、もう毎回ナンノちゃんの可愛らしさにゾクゾクさせられてます。
本当に南野陽子さんはお顔が整ってるな~と思うし、やっぱり眉毛は細すぎず、あるがままの太さが一番だ!とつくづく思ったりします。
大映ドラマ俳優・松村雄基さんも、さすが演技上手いです。
いつも同じ形の目と眉…と思いきや、悲しいとき・怒り狂ったとき・愛に気づいたとき…
その違いを、ぴくぴくっとしたかすかな動きで表現されている!

あと、松村雄基さんの姉役・大場久美子さんの色気もすんごい!
格好はいつも清楚だし、ひたむき風なんだけど、中尾彬さんとの不倫関係に思い悩んでる表情とか、強引に中尾さんに抱きしめられて抗えないお姿とか漏れる声とか、色っっぽいです。

このころと今と、そんなに時代は変わってないはずなのに、化粧とかの差じゃなくて本当にお美しい方って、そんなに今いるっけ…なんて思っちゃいます。
このころのドラマを見ると、みんなとってもお美しくて、かつ色気が包含されていることにただただ感嘆します。

ナンノちゃんのお母さん役の野川由美子さんも、からっとしたお色気で美しいんですよねぇ~。
あと、親友役の佐倉しおりさんとか、ナンノちゃんのことを本気で好きになって、でもナンノちゃんがそんな親友の想いを突き放そうと、わざと男子生徒の肩にもたれかかったりといじわるな仕草を目にするたびに、佐倉さんは木陰で唇かみしめて、こぶしを口元にそっと添えて、わなわな震えて去っていく。
その健気さといったら…。

宅麻伸さんも男前!
でも生徒のナンノちゃんに気持ちが傾きかけてるから、ナンノちゃんがらみの事件が起きたときの強引な解決方法でほかの生徒にブーイング受けてムキになっちゃったりして、恋する男の子みたいなピュアさがぽろっと出ちゃうとこにも惹かれます。
この役の宅麻さん、可愛くてかっこいい!

佐倉さんのお母さん役の梶芽衣子さんもお美しいし、お父さん役の若林豪さんの渋さ、校長役の初井言榮さんは、「ヤヌス」ではおっとろしいお婆さん役なのだけども、それを挽回するかのような理解ある潔さに惚れ惚れするし、あとは相楽晴子さんとか石橋保さんとか、あと名前を存じ上げなかったけど宅麻さんの婚約者でもある同僚の女教師とか、みんなみんなお美しい方・存在感ありすぎな方ばかりで、ほんとワクワクするドラマです。
演出家であられた故・高橋昌也さんも出られてる!
松村さんが慕う陶器職人として…。

どちらかというと、「ヤヌス」よりは「アリエス」を毎週楽しみにしてたのですが、ここんとこ急に杉浦幸さんが私の中で輝きを放ち始めました。
杉浦さんもまた可愛い・ラブリー!

「アリエス」と比べると、「ヤヌス」のほうが2年前のドラマということもあるからか、「ヤヌス」の古臭さとかヤンキーのかっこつけ感に恥ずかしさを感じてて、でもそういうのを存分に楽しもうと割と軽い気持ちで見てたのですが、
いや、しかし、だんだん軽く流せないような展開になってきてます。

「そうそう、これこれ!」

そんな、忘れてたものを「やっぱりそうだったよね」って思い出させてくれることがたくさん散りばめられてる「ヤヌス」なのです。

杉浦幸さんが演じられる多重人格者の役は、幼い頃から続くおばあさんの折檻のトラウマからなのか、その状況が思い出されると、清純な「ひろみ」から瞬時にスケバン「ユミ」に変貌してしまうというもの。
ユミになると、いつの間にか六本木の街中を歩いてて、大沢逸美さん率いる暴走族に絡まれても、ユミ1人で全員を撃退してしまう!
でも変貌してるときは別の人格の記憶も消えてるらしく。
「似てるんだよなぁ…」と周りは思うものの、とにかく本人に記憶はないし、確かな証拠も掴めないし、ほかのスケバンたちがひろみの手のひらに「ヤキ」の痕を入れて、ユミにも同じものを確認しようとの企みも、うまいことバレるタイミングをかわせたり。

でも、ひろみの担任の山下真司さんだけは2人が同一人物なのだと気づいてるし、その不憫さとか、ひろみの戸惑いを目にすると、保護の気持ちなんだか愛の芽生えなんだか、抱きしめてあげたり。

ひろみは、山下さん演じる堤先生のことが大好きで、その想いは秘めてるつもりでも、本人に気づかれてる。
部屋で一人、一心不乱に机の上で何やら書いてると思ったら、セーラー服の水色のスカーフに「堤先生が好き」と、マジックで書き殴っちゃうんだから!
「これこれ!」
好きな人の名前をノートや持ち物に書いてみたくなる気持ち。
平成の子に共感してもらえるでしょうかね…。

私が一番胸打たれたシーンは、おとなしいひろみが大きな高~い煙突に登って、てっぺんに、あの「堤先生が好き」と書いた水色のスカーフを縛りつけてきた、という夢を見ていたというところ。

なぜこんな夢を見たかというと、大好きな堤先生は、今は亡き奥様との結婚を決意されたとき、なんだったか忘れたけど、彼女への想いを綴ったハンカチを、この高い煙突の上に縛りつけてくる、(それぐらい君が好きなのだから)、それが成功したら僕と結婚してくれるかい?というプロポーズをしたんだというエピソードを聞いたから…。
あたしだって、同じくらい堤先生が好き…!という、おとなしいひろみの熱さが垣間見えるシーンでした。

このプロポーズもなんだかよくわかんないのだけど、理屈なく胸打たれるから不思議です。
しかもそのプロポーズの立会人が、同僚の賀来千香子さん。
賀来さんもまたお美しい!

山下真司さんは、無意識に2つの人格を生きているひろみをどうにか見守ってやりたくて、夜の街にユミ/ひろみパトロールに出かけるのだけど、そうすると「センコーに用はねぇ!」「どきな!」「どかないと刺すよ!」と、スケバンたちにいつでも絡まれ、だけど胸を打つのは、「いや、俺はどかない」「たとえ刺されてもだ」「刺せばいい」と、完全非暴力を体現して見せ、案の定ぼこぼこにされちゃう。
「死」よりも「暴力の連鎖」を恐れる堤先生の、若者の暴力の中の鬱屈を毎回全身で受け止めるその姿に、「このドラマは…!」と、ようやく私にもサブリミナル的に何かが植えつけられて芽が出たような感動がぼわーーっと広がりました。

昔の堤先生は、生徒が何か悪さをすると、「愛のムチだ!」といって暴力で罰を与えるタイプだったようで、その暴力で確かにいっときは生徒が
「先生…あたいが悪かったよ!」と涙して言うこと聞くんだけど、本当にその「いっとき」だけで、生徒の根っこの鬱屈はなんにも解消されてなかったらしい。
堤先生から暴力という愛っぽいものを受け取ってるはずなのに、ちっとも満たされない不良女子はなぜだか堤先生に憎しみすら芽生えることに動揺して、(これが愛憎って言うの?)結果、堤先生の奥様を刺し殺してしまう…。

このとき堤先生は、「原因はすべて自分にあった」と、己の一切を反省して非暴力を誓ったという…。
なんとも深い物語です。

ひろみは、そんな堤先生のことますます大好きになる。

ひろみのときの杉浦さんはいつも上目づかいで何かに怯えた表情で、こんな役とヤンキーユミを演じ分けるのはさぞかし大変だろうなと思いながらWikipediaを見てみたらば、デビュー前は杉浦さん、ヤンキーだったとのこと。
そう思って見てみると、逆に、よくあんなにビクビクしたひろみを上手に演じられるなぁ!とこれまた感嘆しちゃいます。
気の強さなどみじんも見えない。
あ、でも宮川一朗太さんにしつこく思いをぶつけられると、「あたし誰のことも好きじゃありません!!」と、案外激しくつっぱねてるかな。
生理的にムリなのだろうということが察せられます。

風見しんごさんがこれまた魅力的です。
「俺、ユミさんにビンビンきちゃうぜ!」
最初、こんな軽薄なセリフを投げかけてたのに、
「俺、ユミさんのためなら死ねるよ…」
いつの間にかこんな真剣愛に変わってます。
「たっちん…」
ユミもさすがに胸を打たれたのか、たっちんこと風見さんと抱き合うのだけど、抱き合いながらも、遠くから2人を見てるたっちんのお父さんに意味深な視線を送ったりして…。
そんで、やがてたっちんのお父さんまで誘惑しちゃうんだけどね。
本当の父親だと知ってか知らずか…。
しかし、その一部始終すら見守ってるのが山下真司さん!
愛が深いです。

「アリエス」でもナンノちゃんが、本当のお父さんかもしれない若林豪さんを誘惑して存分に甘えたりするんですよね。
どちらも「おじさま!」って天真爛漫に。
このころ、父親くらいの男性に愛を寄せる社会現象とか、あったんですかね。

もう会わないと告げられたのに、ナンノちゃんは公衆電話から
「おじさまに会えないなら、あたし死んじゃうから」
なんて言って来てもらったりとか。

「ヤヌス」では、
「あたい、おじさまと一緒に行きたいとこがあんだ…」
と言っておじさんをゾクゾクさせときながら、その場所は夜の遊園地・メリーゴーランドで、そのヤンキーと少女のギャップにまたゾクゾクさせちゃったりとか。
おじさんを翻弄するテクがぎっしり詰まってます。
高橋悦史さんは、最近見てないなーと思ったら、随分前に亡くなられてたんですね。

2人とも、おじさんの前で見せる無邪気な笑顔が本当に可愛いのです。
特に杉浦幸さんは、あの激烈ヤンキーメイクでにっこりすると八重歯がこぼれだして、とってもキュート!
ひろみがいつでもビクビクしててめったに笑顔を見せないので、余計にありがたみが湧きます。

そうそう、ひろみの親友、河合その子さんがまた可愛い!
このころのアイドルの逸材ぶりにもまた感嘆。
竹内力さんも学ラン姿で、ちょとだけやんちゃな生徒役。
とてもスマートでかわいらしいです。
六本木の街を知り尽くしたようなバーのママ、中村晃子さんの色気も
「そうそう、この人、この色気!」
と、とても懐かしい。

「アリエス」では、みんなを振り回してたナンノちゃん=薫が、愛馬のエレクトラを亡くしてから、勢いを失っています。
それは松村雄基さん=司を愛してしまってると気づいちゃったからなのですが、その司もわざと暴力事件を起こして退学してしまう。
そしていよいよ陶器職人に弟子入り!
男のようにさっぱりしてたはずの薫は、ここんとこは司の行きそうな場所を訪れたり、家の前まで行っちゃったり、プチストーカー気味。
いや、機会があれば愛を告げようと決意してるってことかなっ。
その愛の高まりは、ちょうど薫が佇んでいた噴水の水がドバっと噴き上がることで表されてました。

「愛」って何なのでしょうね。
抱かれたいと思うこと?
一生一緒に生きていきたいと思うこと?
薫はそのどちらの願望にも気づいたことで司への愛をはっきり自覚したのだけど、高校生役なのに「一生」とかにちゃんと重みを感じられるから不思議。

馬への愛、姉と弟の愛、親子の愛、師弟愛、いろんな愛が出てくるけど、男女の愛ってやっぱりあやういものだと思ってしまう。
「抱かれたい」とかは愛欲で、でもそれって「愛」じゃない?
よくわかりません。

もう、ドラマにおしゃれとかイケてるとか軽快なツッコミとかゆるいボケとか、どうだっていいんじゃないかなと。
昭和のドラマの必死感。
みんな「愛」とか「生」を懸命に模索してる。
普遍的な問題を浮き上がらせながら。
ドラマに真剣な社会を見いだしたいのかもしれません。
刑事ものや医療ものでしか、浮き彫りにならないでしょうかね?

「ヤヌス」と「アリエス」、昭和のダサさに笑ったりほっとしたりしながら、自分をビンビンさせるものは何なのかなってことを、引き続き見つめてみようと思います。

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