音楽世界の不気味さ

ミュージシャンに惹かれるとき・曲に惹かれるとき。
私の場合は、なぜか自分にフィットするリズムに「わ〜」と胸が揺さぶられて、興奮や集中のスイッチが一気に入る。
まずリズムにグッとくることが多いので、「イントロかっこいい!」から始まって、さらに旋律もよし、間奏も最高じゃないか!と感じたら「ちょ、誰?この人」という検索や深掘りが始まる感じですね。

もしそこに「不気味さ」の要素まで加わったら、恋なのか中毒なのか「ハマる」というスイッチがさらに入ることになる。

自分の音楽史において不気味スイッチが初めて作動したのはユニコーンだった。
ベストテンだか音楽番組で「空気読まないぜ」みたいなちょい暴れパフォーマンスを繰り広げながら「ダ・イ・メイワク!」と叫んでいた。
いや、それおたくら…というツッコミをあえて狙ったのかはわからないけど、民生の甘いマスクと大いなるイタさに胸が高鳴った記憶があります。

「大迷惑」のミュージックビデオでは序盤から「ヤバいな」と思った。
テーマは新婚サラリーマンの転勤の悲哀。
なんなんだ!というツッコミの間もなく、切なげでドラマチックなサビに惹きつけられている。
そして最終盤の「あれは何 何はアレ・・」
狂ってる・・!
そう表現する民生は不気味だったですよね〜

そんで急いでCDレンタル屋に走って、見つけたのが「服部」

「服部」Amazonページより)

なんでだっつの!!
アルバム名もさることながら、なぜこんなおっさんがジャケなのか…誰なのか…
この不気味さはアルバム曲「服部」で一掃される。
イントロからもうたまらない最高にかっこいい曲。

その後、いろんな音楽を好きになりましたが、不気味さという点でいつまでも記憶に残るもう1人。
椎名林檎。
1stアルバム「無罪モラトリアム」のジャケ、ほんと不気味ですよね〜

無罪モラトリアムAmazonページより)

でも「ここでキスして。」から不気味さを感じてたわけではない。
椎名さんのある種のヤバさが世に浸透したのは「本能」以降じゃないですかね。

不気味さ・ヤバさが「好き」に転じるかどうかは微妙なところで、私はしばらく嫌悪感があった。
当時のインタビューではメンタルの不安定さが垣間見えることがあり、長期入院中に思うところがあったのか、「死」に向かっていくようなことばかり言う。
インタビュアーも「話がどうもそっち(死)に行っちゃいますね…」と戸惑いを隠さない。
メンヘラ系で売り出したいのかな?と、当時はメンヘラというワードはなかったけど、そうくくることで林檎に振り回されないぞと踏ん張ってるようなインタビュアーの記憶が今もあるのは、嫌悪を抱きつつもどこか不気味な魅力にすでに惹きつけられてたのかもしれない。

ところが「ギブス」と「罪と罰」ですよね。
2枚同時発売。
うわ、かっこいいとまんまと思った。
狂ったようにギターをかき鳴らすMVの林檎も不気味(けどかっこいい)
ベンツを真っ二つに割る林檎、何よりあのメイクが不気味(けどかっこいい)
「罪と罰」の旋律には抗いようもなく惹きつけられるし、「ギブス」の間奏がとにかくかっこいい。
降参!!
魅力に大降参です。

そこでやっと1st 2ndアルバムを手にしたわけですが、アルバムの中も不気味な曲満載じゃないですか。
2ndの1曲目が「虚言症」、最後曲が「依存症」
たまらないですね。

でも自分の音楽史上最も不気味な魅力を放つのは岡村靖幸でしょうかね。

中学時代に「だいすき」が大ヒットして、友達がいち早く岡村ちゃんの深掘りをして、私もアルバム等薦められました。

「早熟」Amazonページより)

あのころの岡村ちゃんといえばこんな上目遣いの人で、この視線も服装や髪型などどう捉えればいいかわからなかった。
「ちょ、パス」
友達からの推薦辞退を、まさか30半ばで後悔することになろうとは。

35のときに雑誌で岡村ちゃんが特集されていたことに衝撃を受け。
「痩せてる…変わった…かっこいい…かも?」
そこから深掘りしてまもなく「ぶーしゃかLOOP」にたどり着く。

視線、表情、行動、すべてが不気味なこのMVと自分好みのリズムにどハマりしてから岡村ロードを歩んできてますが、それでもあのころ、その沼に浸ることにひどく怯えていた。
「家庭教師」や「早熟」をどう捉えていいかわからない。
素直に「いい曲…」と思う自分は「合っているのか?」とひどく不安になっていたことは今じゃ懐かしいですが、ネットで自分の感覚を肯定すべくいろんな感想を求めて心を落ち着かせた。
それほど岡村作品の不気味さは群を抜いていたわけで。

だってシングル「家庭教師」なんて、今でこそ胸張って最高傑作と言えるものの、間奏で「教え子とのプレイ(妄想)」を聴かされても、どう捉えていいかわからなかったですからね。
「セぇーッ(くす)!」と叫ぶこの人は大丈夫なんだろうか?(大丈夫じゃなかったんだろう)という気にかけが恋心に変わるのに時間はかからなかった。
岡村ちゃん好きに自信を持ててからアルバム「Me-imi」を手に取りましたが、「5!!モンキー」の意味のわからなさを素敵と思えることに誇りすら抱いてましたね。

そんな自分も「禁じられた生きがい」に魅力を見出すのは少し時間がかかった。
ライブに何度も参戦して、「チャームポイント」がこんなに素敵な曲だったかということを知りました。
だけどそれも「秋葉原で定期ドロボウにあったキミにバス代を貸してあげて”ありがとう”と言われたボク」という部分を切り取ってのことであって、その他の部分は「毛を隠せ」とか「恨んだ女諦めきれずにピンポン押しちゃいそう」とか不穏さ満載曲。
そこがいーんじゃない!
みうらじゅんの肯定法がぴったりくる岡村ちゃんソングです。


思えばユーミンだって、男たちへの復讐心など不気味さが漂うとこがいいのであって、そのドロッと感を打ち消す旋律やリズム、サウンドも最高。
そのあたりはまた今度にします。


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