「燕は戻ってこない」

NHK火10ドラマ「燕は戻ってこない」見てます。

画像は「燕は戻ってこないHPより」

桐野夏生さんの小説が原作。
まだ日本では認められていない代理出産の物語です。

優れたバレエダンサーとしての自分の遺伝子を残したいと願う夫(稲垣吾郎)は、元妻と離婚してまで愛した現妻(内田有紀)との間になかなか子どもができない。
治療で心身にダメージを受け続けてきた妻はこの先、妊娠が見込めないことをある日医師に告げられ深い傷を負うも、自身も名バレリーナだった夫の母(黒木瞳)は遺伝子が受け継がれることを諦めない。
そこで湧いて出た話が、夫の精子による体外受精・代理出産で子を迎えること。

物語の主人公・リキ(石橋静河)は、必死で働いても手取り20万も行かず安アパート暮らし。
アパートの前に転がる汚い自転車を手荒くよけたことで、その持ち主である住人にストーカー気味に付きまとわれ、故郷で慕っていた叔母(富田靖子)の葬式に参列するお金もない。
そんな折に同僚(伊藤万理華)から「卵子提供のドナーになればお金がもらえる」「一緒に登録しよう」と持ちかけられ、追い詰められる生活の中でうっかり登録してしまうリキ・・・

すごいドラマです。おもしろい。
「よくできてる!」と思うポイントがいくつもあるんですよね。

よくできてる!その1
・石橋静河さんの貧困感

石橋静河さんはこれまでのセレブ感のある役だって素敵でした。
ただ、なぜか貧困寄りの役も多いですかね。
これがまたハマってるんですよ…

赤いジャンパーがまたよくお似合い…
襟が茶色のコーデュロイ。
静河さんが着ればそりゃ可愛いけど、このなんとも言えない作業着風ジャンパー。
私が着たら日雇い労働者ですよ。
一体誰が見つけてきたのか。

同僚・テル役の伊藤万理華さんがまた困窮感に説得力を持たせます。
最近、脇役でもこんな鮮やかなヤンキーは珍しい。
伊藤さんといえばつい最近、NHKで「パーセント」の主役。
そちらでは元乃木坂っぽさがほの見えましたが、このドラマでは「女として人の役にたとーぜ(そんで金もらおーぜ)」と卵子提供登録を持ちかける。
とかいって彼氏との間に子ができんだけど。
そりゃないよ!登録しちゃったじゃん!と憤慨するリキは、もう後戻りできないとこまで来ていた。

石橋静河さんの終始暗い顔と低い声が生活の不安定さとぴったりで、だけどそこは石橋さん。
美しいんですよね。
造形の美しさだけじゃない、表現の美しさというんでしょうか。

よくできてる!その2
・セレブな人たち

なんたって稲垣吾郎さんが元有名バレエダンサーってのがすごいと思う。
その母が黒木瞳さんですよ。
なんとセレブ感あふれてることか。
血筋・子どものためなら1000万以上あっさり払える人たち。
黒木さん演じる母は、息子が元妻と別れて悠子(内田有紀さん)を選んだのが本当理解できない。
不妊体質だなんて。

このあたりのハラスメント性がひどいのですが、黒木さんが悠子を認めないのは不妊のことだけじゃないと思う。
上級なものにこだわる嗅覚は、そうじゃないものにも鼻がきく。
悠子もまた、貧困とは言わないまでもイラストレーターで身を立ててきた。
今でこそイラストがCM起用されているけど、過去の悠子の生活はリキとどこか重なる。
その重なるような素朴感が内田さんから漂うのもすごいんですよね。

似てる…とリキを見て感じるからこそ、リキには無理を強いたくない。
自分を大事にしてほしいと願うものの、「これで遺伝子がつながる!」と喜ぶ夫と義母の勢いに逆らえないし。
逆らえないんだけど、自分の内側にある正義感や倫理観は決して失いたくない。
その熱さが内田さんから放たれてるのも、なんか嬉しいんですよね。
そして、とても悲しい役。悲しさが美しいのです。
また稲垣さん演じる基の鈍感さ!
ムカつくほどの鈍感さでいつもキョトンとしちゃってさ。
ぴったりなんだよな〜

よくできてる!その3
・戸次さん

リキが処女を捧げた相手→既婚者の戸次さん
「俺とホテル行くべ?」
なんでだよ!っていうこの図々しさ。
でもなんか、地元でよく目にするような既視感がありましたね。
「奥さん妊娠中では…?」
リキの不信感もまっさらにしてしまうあの自信過剰な笑顔。
「ほいじゃ、ダメかえ?」みたいに引くふりして、なぜか効果的なやつ。戸次さんうめぇ〜
リキはまんまと「いいけど…」と応じてしまう。
体を重ねれば情が湧くリキに、「離婚なんてしねえよ?だけど時々こうしよっ」と、既婚者あるあるのクズさ。
田舎の介護施設の浮気者マネージャー、そんな人実際会ったことないけど、戸次さん見ると「いそう〜」と心から楽しくなりますね。

よくできてる!その4
・友達だけどセフレ

卵子提供先が見つかったことを同僚のテルに話したリキ。
ということは、今後は恋人を作ったり自由な性生活を送れなくなる。
採卵とかが始まる前に女の性を楽しんじゃいなよ!と、女性用風俗サイトを紹介してくれたテル。
そこで出会ったのが沖縄出身のダイキ(森崎ウィン)
リキとダイキはなぜかウマが合って、風俗外でも連絡取り合って家で過ごしたり。
ダイキのことを「ともだち」とリキは言う。
このシーンがすごく印象的でしたよね。
体を重ねるけど恋人っぽいわけじゃなく、快感を追求したいわけじゃなく、そばにいてほしいと思う。
沖縄に帰っちゃうなんて寂しいという気持ちは、テルが名古屋に行くときに感じたのとそう変わりはなさそう。
友達、フレンド、セックスフレンド
まぁそれでいいじゃないかと思える説得力を感じたんですよね。
恋とは違う親しみをお互いに感じている。
ただ、採卵始まってるのにやっちゃってるね…

リキはついに妊娠。
しかも双子。
誰の子かは今のところ不明。
ダイキの子?
基の精子?
郷里に帰ったときにまた誘ってきたあいつ?(戸次先輩)

あと、生殖医療エージェントの朴璐美さん。
なんか度肝を抜いてきますよね。
ショッキングピンクのお衣装だから?
迫力のある声色?
「んまぁ〜」って感情を出しても、金のことしか考えてないように見える。
朴さん出てくると「イカゲーム」みたいな異様さが漂ってきてワクワクするんですよね。

内田有紀さんの親友役・中村優子さんや、ストーカー親父・酒向芳さんもみんなみんな楽しい。
外国人との間に子ができたテルもどうなるのか、気になることがたくさんです。






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