NHK「女子的生活」

「女子的生活」、2018年放送。
このたびNHKオンデマンドで視聴しました。

志尊淳さんはトランスジェンダーの「みき」役。アパレル勤務。


NHKドラマより

トランスジェンダーといえば最近は、映画「ミッドナイトスワン」での草彅剛さん演技の評判をよく見かけます。やっぱり憑依型俳優だと絶賛の嵐。

トランスジェンダーというとテンションが異様に高く描かれがちだったりして、草彅くん演じた凪沙はそうでもなかったようですが、誤解や偏見を生むキャラにされやすいという非難を目にしたりしました。
そんな中で、トランスジェンダーの方が薦める作品の一つに「女子的生活」が挙げられてたのです。
確かに志尊さんが演じたみきは取り立ててテンション高めなわけではなく、終始冷めていた。

当時リアルタイムで途中から見てたつもりが、4話のうちの1.5話くらいしか見てなかったみたい。
なのに「解った」気になってた自分が怖い。
改めて観ると、2018年の私はトランスジェンダーどころかLGBTについての知識や理解に乏しく、衝撃を受けたドラマだったとはいえ「そういうドラマあったね」で済ませてたなという記憶が蘇った。
また、志尊さん演じる「みき」の心の声にハッシュタグがついてテロップ表示されるのも、今でこそ自然に受け入れられるもののインスタもやってなかった当時の自分は、どこかイケ好かなさを感じてた記憶。つまりドラマの世界と自分との間にものすごい距離があった。

今、距離は縮まったのかと問われれば、人間関係も私の環境にも変化はないですが、ただ今年・2020年。
BLM(Black Lives Matter)の問題が世界中で共有され、これまでになくマイノリティー/マジョリティーの境が可視化された年だったんじゃないですかね。いろんな差別がすごい勢いで大勢に認識された。
様々な情報は私にも加速度つけて流れ込んできて、これまた荻上チキさんのラジオきっかけですが、LGBTについての本を買ったりしたことなどで、2年前よりは知識も理解も深まってきてると思うのです。
コロナのせいなのか、とりわけ今年の私はマイノリティー/マジョリティーにやたらこだわっている。
でも私だけの変化じゃなく、今このドラマが再放送されたら反響が倍になるように思うんですよね。

 

トランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた身体的性別と性自認が一致しない人のことで、女子として生きているみきの恋愛対象は女性。
セレクトショップ勤務のゆい(小芝風花さん)とみきが恋愛関係になりますが、これが描かれた1話・2話はすごかった。2年前にこれをNHKで放送してたんだ!?と、今頃衝撃を受けるという。

2話で、みきの元カノが出てきますが、この方は西原さつきさんという実際のトランスジェンダーの方。
このドラマでも演技指導をされたそうです。
「ミッドナイトスワン」についていろんな議論が巻き起こるのを目にしましたが、その中の一つに、トランスジェンダーの役をシスジェンダー(身体的性別と性自認が一致してる人)がいつまでも演じるべきなのか?(トランスジェンダーの俳優が育たない要因になるのでは?)などの意見があった。
確かにゲイやレズビアンの物語に触れる機会が増えたとはいえ、ストレート前提の役者が演じることがほとんどと思う。カミングアウトの問題とか、特に日本では環境整ってないだけに難しそうなんだけど。
志尊さんの仕草や歩き方はモデルみたいにしなやかで、ホント全部可愛い。
これらを西原さんが指導したんだなと思ったら、完璧じゃないですか!と感動しました。
西原さんは「乙女塾」という女性らしさを学ぶスクールの代表も務められてる方で、生まれながらの女性でも参加可能とのことです。
「女性らしさ」と言えばいつでもお嫁さん候補と結びつく息苦しさがあるけど、乙女塾で体験することは「女」であることを純粋に楽しめそうだな。みきの元カノとしての西原さんも可愛らしかったです。

 

「女子的生活」のストーリーについての感想です。

志尊淳さんにとってこのドラマは、「半分、青い。」のボクテより前なんですよね。
私はあのころ志尊さんを知ってただろうか。認識してたかな。
この「みき」という役はとても魅力的でした。
おしゃれな女の子を目指して生きている。アパレル企業で活躍中。
健康や美容にも気をつけてて、街を歩けば人の目を引くほど華やか。
なのにどこか暗さをまとうんですよね。目がとても暗い。
それは志尊さんが「みき」としてそう演じてるんだろうけど、あの垂れた人懐こい目がなんとも悲しそうというか、怒りも静かにたたえてる。

志尊さんは太陽魚座。このころ22歳で金星期・金星は水瓶座。火星は獅子。
水瓶ー獅子は最強に人目を惹きつけるラインと思いますよ。
そしてやっぱり魚座はマイノリティー役がとても合うと思う。
不思議と存在するだけで、「こっち」と「あっち」をはっきりさせるんですよね。そこに問題を浮かび上がらせる。
志尊さんの月は牡羊か牡牛か不明ですが、私は牡羊じゃないかなと思った。
というのは、みきが結構キレるんですよね。それが痛快なのですが、小芝風花さん演じる「ゆい」を焚きつけるとことか、瞬間的にカッとなるところが火星座っぽかった。P太陽が牡羊座というのもあるかも。

そのゆいですよ。
小芝風花さんはセレクトショップ勤務。それがまたナチュラル系のお店・ゆいも全身ナチュラル系で、みきとゆいが合コンで同席したあのシーンはすごかった。
女が敵視する女といえば、玉井詩織さん演じる「かおり」のような、アパレルゆるふわ系でしょうよと思ってた。


日本映画専門チャンネルより)

その思い込みは相当古いと思わされましたよ。
ゆいのような、服の質も食も生活全てオーガニック主義こそ今、女の頂点に立つ女なのですね。
一方、かおりやみきはファストファッション系のアパレル勤務。
「自分みたいな女がチープでバカっぽく見えるじゃん!」と歯噛みしていたかおり。
みきといえば合コン相手の男は眼中になく、新しい彼女を探しに来た。
でもここは同僚のかおりのために、あの女に一泡吹かせてやろうと近づく。
オーガニック女の化けの皮はがしてやると、嫌味ひとつふたつ投下。
すると、木綿のように微笑んでいたゆいがみきに囁く…


NHKオンデマンドより)

「このゆとりビッチ」

ここでみきは恋に落ちてしまったのかなぁ…。

なんで恋に落ちるかな…と思うものの、これが女同士の真のふれあいかもしれません。
もっとすごいのが、みきがゆいに提案するところ、「ねぇ、あっちでゲームしない?」
そのゲームってのが、合コン男子ほったらかしで二人でいちゃいちゃすること。
「ねぇ、君たちー。え…?あれれ?」
キス寸前みたいに絡み合う二人をキョトンと見つめる男の顔見て大笑いするみきとゆい。
このゲームに乗るゆいという女…わからない…。
けど、ゆいの上にはどんな女も立てないと思ったっすね。敗北感。
そのゆいの心を射止めたのがみきだったんだなぁ。

ゆいは、トランスジェンダーであることを告白したみきの遊び相手になる。遠距離の彼氏あり。
ゆいは多分退屈していた。男との交際に。
結婚だって望めばあっさり手に入りそうな日常に飽き飽きしてたんだろうな。待ち望んでたようなゲームに乗っかった。自分最強に可愛いってわかってる女。あらかたもう手にしてて。
そういう女って実際どれだけいるんですかね?なんだかんだ東京にはいない気がします。東京じゃあの性格で生息する勇気なさそうというか。
でも神戸とか西日本には確かにいそうなんですよ。(ドラマの舞台は神戸)
性格悪く描かれてるゆい。なのに魅力的なのは率直に描かれてるから。
本当に好きになるのに性格の良さも悪さも関係ないかもねってことを思い出しました。やっぱ可愛いしね。同性でも、性格悪いとわかっててもめちゃキュートな女子にお茶誘われたら嬉しくなる。
みきが出会った中で最も可愛い女がゆいだったのかな。「可愛い」に理屈抜きに惹かれていくってのはよくわかります。

小芝さんは太陽が牡羊座。っぽい!この気の強さ。
金星が牡羊と牡牛の境目ですが、牡牛っぽさも漂ってるんですよねぇ。なんたってオーガニック女子ですから。
でも小芝さんもP太陽牡牛座から「っぽさ」を放ってるのかな。月は獅子座です。
火星が乙女。っかぁ〜っ!辛辣なキレ者です。頭いいんだ、火星乙女は…。

この二人のカップリングを見ちゃうと、みきの同居人・後藤(町田啓太さん)がどうでもよくなります(笑)
しかし町田啓太さんの笑顔がいいんですよね〜。


リアルサウンドより)

町田さん演じる後藤という男は、元カノの借金保証人になったことで取り立て屋に身ぐるみ剥がされ、高校の同級生・小川幹夫(みき)を頼ってちゃっかり同居させてもらったりする。
本当ちゃっかり男ですよ。
みきは後藤みたいな薄っぺらい男が大嫌いだけど、とにかく後藤はまっすぐなやつで偏見がない。
女の子になろうと日々努力するみきに胸を打たれたりもする。
「まぁ置いてやってもいいか…」とみきが受け入れてから、ちぐはぐながらも楽しい同居生活がこの物語のメインストーリーでもあるんですけどね。
私は後藤という男が男として好きじゃねぇなと思ったんですよ。
不思議なんだけど、シス同士の関係性の方がよっぽど雑で面倒に見えちゃうのはなんでだろうなと。

みきと生活してる後藤は本当楽しそう。
後藤はかおりをうっすら狙ってて、だからかおりにランチ誘われればそれも本当嬉しそう。
「お正月は実家帰ったの?」とかおりに聞かれて、「帰らなかった。小川が実家帰ってくれればかおりちゃんを呼べたのに」と言うとこ引きまくった!!
かおりも「は?」と。
なんていうんだろうね。現代の男と女の分かり合えなさが詰まってるようなシーン。
「呼べた」ってなんだよ。ぞっとするね。
しかしそう思われて嬉しい時代が自分にもあったかもしれない。後藤はその時代で止まってる男。

後藤はどこか古いんだよなぁ。人間として眼に映るすべてに理解があっても、男としてはどこか雑。
でも、そう描かれてるのがこのドラマの楽しさでもあるけどね。
だからあんなにキュートなかおりでも恋の進展がなく、「”結婚しなきゃいけない”ってなんで思わされるんだろうね…」とため息をつく。
現代の男と女の乖離は、こういうドラマでも浮き彫りになったりするのです。

古いのは後藤だけじゃないかも。出てくる男性の6割は古かった(でも4割は時代や性別に理解あり)。
そして古さは頑固な無理解につながり、暴力性も帯びる。
マジョリティーと信じて疑わないキモい正義感の押し付け。
後藤が連れてきた同級生の高山田(中島広稀さん)は、自称うつ病でニートという一見マイノリティーの側。
だけど女になったみきを目の前にした途端、暴力的な言葉を連発する。
マイノリティーの顔して被害者意識から抜け出せない高山田へのみきの視線も容赦ないのです。
「こいつ、うつじゃない」と気づく。
クサクサしてるように見えて、男という圧倒的マジョリティーの立場からみきを侮辱するただのクズ。
マウンティングできる獲物をいつも探し出そうとしてた高山田に、なんと女装を勧めるんですよね、みき。
その潜在性をどうやって見抜いたのかはドラマではよくわからなかったけど、マイノリティーにもマジョリティーにもなりきれない高山田を女装家に仕立て上げてから、展開ががらっと変わりました。
結局、みんなどっちかの「極」に行きたいのかな。中途半端な自分が一番気に食わない。
でも極に行く勇気がないうちは、極の誰かを攻撃したり侮蔑するんでしょうね。
みきは、なんで人が人を攻撃するのかの仕組みをよくわかってるように見えた。
ふわっとした役が多い志尊さんが強者と弱者を見つめる目の鋭さ。そこに諦めもにじみつつ正義感をみなぎらせたりもして、あの大きな目のその色がくるくる変わってました。それがまた色気で…。

ちなみに町田啓太さんは太陽蟹座。あ〜仲間思い・地元思い・ちゃっかりダメ男具合が「っぽい」です!
金星は双子、っぽい!チャラいからな。火星は牡羊、熱血漢なのです。松岡修造的語録とB’zが大好き。
月は蠍か射手か不明です。
玉井詩織さんは太陽双子座。ファストファッション似合いそう。
金星は牡牛です。P太陽は蟹座で、ここがゆるふわ女子っぽい。
火星がなんと乙女なんですよ。月は獅子。ここは小芝さんと一緒。かおりも確かに気が強く辛辣でした。

みきとかおりの先輩・仲村さん役は玄里さん。
この3人のフラットさがすごいよかったですよねぇ。
誰かが失敗して浮かない顔してても、仲村先輩が付かず離れずでさらっと励ます。
玄里さんは太陽射手座です。

また4話ゲストの土村芳さんがよかった…泣きそうなほど素敵な役でした。
お嬢様役。しかも服のセンスが授業参観的、お帽子と胸のコサージュは必須アイテム。
パーティーで出会ったみきになんだか惹かれちゃうんですよね。「お友達になりたい!」と。
そんで、みきの家に「来ちゃった…」と(どこまでも古い)。

NHKオンデマンドより)

本当のお嬢様って人を疑うことを知らず、こんなふうにまっすぐなんでしょうね。
婚約者にDV男っぽい支配性を嗅ぎ取ったみきは、「本当に結婚していいの?」って土村さん(マナミ)を心配するけど、「いつか変わってくれると信じてるの…」とマナミ。
土村さんがめちゃ上手いというのもあるけど、泣けた。なんか悲しくて。
かおりも「いつか…」と、理想的な出会いと結婚を描く。
女は「いつか…」を信じないと生きていけないだろうかな…ということが悲しかったですよ。
女も女で大変だね、、とみきは思ったかな。
みきは、この格好で街を歩けるのも若いうちじゃないかと未来を恐れる。
どんな未来でも風貌でも、堂々と歩けたらいいよね。10年後にはそういう世の中になってれば…。
若く・きれいでいなくちゃと焦る未来じゃなくて、どんなんでも誰でも「ここにいていい」と思える。そういう世の中になったほうが絶対互いに優しげなんだから、いろんな理解や実際的な制度が進んでいけばいいなと思いますよ。

土村さんは太陽射手座・月天秤。大らか・優しげ!
金星は射手、火星は双子でした。双子ー射手はボーダーレスラインという感じがします。
境目をことさら意識しない。
N水星P太陽山羊というのが、クラシカルな土村さんの雰囲気っぽいです。

あと在宅デザイナーの前田亜季さんの卑屈さがまたうまいなぁと思ったし(薄幸そうでいて無神経)、アパレルの上司・羽場裕一さんのチャラさもなんか救いでした。
なんたってみきの父親・本田博太郎さんです。決して多くないセリフの一言一言に泣けました。自分の子どもが元気で幸せだったらそれでいいという愛に、みきが触れられてよかったなぁと。
みきが何かというと心癒やしに駆け込む水族館館長が鈴木慶一さん!音楽担当でもあります。

2年前の放送というのにみっちり書いてしまった。
観たばっかりだけど再放送してほしいな〜。そしたら今度は録画して永久保存しよう。

 

こちらの本がとても勉強になりました。
LGBTとハラスメント

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