「愛のコリーダ」「戦場のメリークリスマス」

大島渚監督の作品をいずれ観ないと・観たい…と、この2作品をU-NEXTのマイリストに入れておいたものの、なかなか再生の勇気が出ませんでした。

今、修復版が再上映されてるようですね。
今ならこのムーブメントに乗っかれるかも…!と、U-NEXTでついに観てみました。

まず「愛のコリーダ」(1976年)


新宿武蔵野館より)

「阿部定事件」が何なのか知ってる人は、誰しもが頭の中に鮮やかな鮮血と、その中にいる男女を思い浮かべるんじゃないでしょうかね。
でもそれは、「愛のコリーダ」という作品による世代的イメージなのかもしれません。
映画を見てなくても、40年近く生きていれば大島監督による「赤」のイメージが刷り込まれてるはず。阿部定事件が描かれた映画です。

とにかく赤色が美しかった。
そしてとにかく絡んでますね。絡みまくってる。
この映画がなぜセンセーションを巻き起こしたかといえば、「本番」だからでしょうね。
いろんな感想が渦巻きます。
私はいまや「時代」にこんなにも敏感になってしまって、当時の演者にいろんな思いを馳せざるを得ません。
道徳観みたいな感想を無粋と切り捨てるなら、切り捨てようとする人に私は鋭い目を向ける。…向けといて、自分だけが感じたうまみみたいなものをひっそり味わい尽くすのです。大島監督の作品はどれもこんな背徳感を抱かせられるのだろうか?それを知りたくて、「戦メリ」も観たともいえます。

だけど割と呆れましたね。
藤竜也さん演じる吉さんと、松田英子さん演じる定が同じ宿屋で朝から晩までまぐわってるのですが、そこの女中が「お客さん、すごいにおいですよ…」とうんざりした顔をする。そのにおいがこちらにも感じられるほど。実際、阿部定と吉蔵の部屋からは異様なにおいがしたそうです。
私も映画を見てて、あと何回やるだろう(もう見たくない)と思ってしまった。ひどいなと思う箇所もあります。注意が必要です。だんだん役者さんの苦労とかにまで思いが及んでしまって…こういう見方は監督の望むところではないかもしれません。

周囲は定と吉蔵をかなり冷めた目で見てます。
大島監督の狂気を怖いほど感じる一方で、こういう真っ当視点とのコントラストを思うと、監督の中には「普通」という確固たる軸があって、あるからこそぶっ飛んだ作品を生み出すんでしょうかね。
私がこの映画で一番揺さぶられたのは、町なかを行進する軍隊と、軍隊とは逆方向へふらふら歩く吉蔵のシーン。「あっ!」と一瞬の衝撃というか感動がありました。

思えば吉蔵は不思議な男です。
また藤竜也さんがうっとりするくらいいい男で…自分でもそれをわかってる男っぷり。
だからといって目の前の尻に触ってはいけません。しかし女たちはそれを喜ぶ。
「へへへ〜」とニヤつく吉さんは、表向きはずっと「命などべつに惜しくない」という危うさをずっと漂わせてる。何を肯定しても否定しても吉蔵には同じこと。だったら否定のエネルギーなんてわざわざ使わない。快楽があればそれでいい。すべてが緩みきってるようでいて、実は誰よりも命に執着がある…ように見えた吉蔵です。
もしくは「どうやって死ぬか?」を常に考えてる人だったかもしれない。召集されなかった男。
最後のほう、私にはもう定があまり美しく見えなかった。
あのまま関係を続けていたら腐る一方。吉蔵はそのときに観念したのかな。

定を演じられた松田英子さんも不思議な役者さんです。どんどん美しくなるんですよね。
今でも私の脳内で響くのは、あんまり演技がうまくない松田さんの独特のイントネーション。
大島監督がここまで計算して撮ってるのだとしたら…。
いろいろ問題はあるにしても、作品を観たことで自分の感受性が刺激されることは間違いないです。
大島監督が描く「美」とか「快」、そこに込めた渾身さを私は受け取ったという感慨。
一生の背徳感を抱えてしまったかもですね。

 

 

「戦場のメリークリスマス」(1983年)


映画.comより)

この広告、かっこいいですね。
大島監督の「美」のセンスにはどうしても揺さぶられます。
なんたってデヴィッド・ボウイの美です!!!美しすぎる…。
坂本龍一さん演じるヨノイ大尉がなぜ化粧してるんだというツッコミどころはありますが、それも不思議に美しい。しかし処刑されるべき人間性ですよ…。

当時、この映画がどれだけ話題だったかの記憶はあります。
人気者だったビートたけしと戦メリのあの曲が、1983年を確かに彩った。
坂本龍一さんもYMOとして、清志郎との「い・け・な・いルージュマジック」でも大人気者でしたね。
だけどこの映画が何なんだという議論までは耳に入ってこなかった。
「何なんだ」がずっと浮遊して2021年。観ても「何なんだ」はそのままだった…そんな映画です。

たけしさん演じるハラ軍曹の笑顔が最大の見どころとも言えますがね、ハラが本当ひどいんですよ。嫌悪感マックス。私は最後にあの笑顔を受け入れられるのか?(もう見続けられないかも)とまで思った。
でも見れたのです。視聴者心理を考慮した仕掛けでもあるのかな。

坂本龍一さんの演技が上手くないという書き込みを多く見たけど、そうですかね?
デヴィッド・ボウイにキスされて卒倒するヨノイ大尉、あそこすごい好きなシーンです。
坂本さんがドギマギする顔はたまりません。
大島監督の映画ってあえて不器用な人を入れることで何かの効果を狙ってるようにも思いました。
演技というなら、ハラの友人ともなるロレンスの日本語はかなり聞き取りにくかった。
それもそのはず、ロレンス役の方は日本語がわからないので音で覚えたとのことです。
見渡してみれば、誰が演技うまかったとかそういう人はいないかも。
でも内田裕也さんはキマってたし、内藤剛志さんも若々しさいっぱい。
演技どうこうより、この作品に君は出るか?に応じられる人をキャスティングしたのかなと思ったけどどうだろう。監督から熱烈オファーを受けた方もいるでしょうけどね、演技うまい人が嫌いなんじゃないですかね。勝手な想像です。

もととなる原作があるようです。日本軍の俘虜となったイギリス人男性の手記。
本当にこんな状況だったのだとしたら、ひどいことばかりです。
戦争の酷さ、それは一体どんないいこと生み出したか?といえば、男の友情、そんなバカなことはない。そういうふうに見たくはない。監督や映画のメッセージがどうであれ、ひどさ、ひどさ、ひどさ…これをめいっぱい自分の中に叩き込むしかありません。
メッセージ性が実際あるかどうかわからないけど、それを脇に置いておけるのなら、視覚的に感激するポイントはたくさんあると思う。そして最後にあの曲なのです。
あざとさ盛りだくさんでもあります。
あの時代、そんなあざとさが何度も許されるものじゃないとしたら、この1作に何か賭けのように注入されてるように感じました。大衆性に挑むには、あざとさしかもう手段がないというような。

大島監督っておしゃれだなとも思います。
愛のコリーダも、あの「赤」だけですべて許せてしまう何かがあるし、戦メリでは冒頭のクレジットがオレンジ色で、フランス映画みたい。あと歯並びですね。歯並びが整ってないってなんて美しいことだろう。デヴィッド・ボウイの犬歯が美しい。確かに伝説が詰まってる2作です!

 

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