「わが母の教えたまいし」

BS12の毎週火曜日は向田邦子ドラマ傑作選が放送されてました。

この向田邦子傑作選では、長女役が大体田中裕子さんです。
昨日は「わが母の教えたまいし」というドラマ。
向田さんのドラマっていつも姉妹が描かれるんですよね。
長女がいつも主役とは限らないものの、主役はほぼ自分を抑えた地味な生き方の女性。
それは向田さんが投影されてるのでしょうか。
奔放で気の強い姉や妹にいつも挟まれる。
でもどれも向田さんであり、私であるとも言えそうです。

昨日の主役は長女でしたが、すぐ下の妹と母親が恋愛体質でした。
長女・祝子(しゅくこ)は体が弱いこともあり、恋愛も心から楽しめない。
根っからの長女気質で家のことなんでも背負ってしまう。
母役は向田作品ではおなじみ、加藤治子さん。
すぐ下の奔放な妹は南果歩さんでした。

母から教えてもらったこと。
それは着物の縫い方や、暦の変わり目に何を食べて、お正月に何を飾り付けるか。ごはんのおかずの味付け。家を預かる女性として身につけておくべきこと全般。
それをとても誇りに思ってたし、そんな母が大好きだけれど…。

教えてもらってないのに嫌でも自覚されるのが、恋愛、男を欲するということ。
時々、母を愛してるのか嫌いなのかわからなくなる。
父以外の男性といるときの母の輝きに、どうしても気づいてしまうから。
祝子はそれを振り払うように生きてきて。

「姉さんはいつも抑え気味に生きてるのよ」

複数恋愛している妹と対照的な生き方の祝子。
妹からそう言われるのはたまらなく嫌い。
ふわふわした髪が男性ウケすることをちゃんと知ってる妹と、女性性を最小限にしてても漏れ出すものがある祝子。

どこに行くにもデートにもマスクをする祝子。
そのマスクを婚約者の小林薫さんにそっと外されてキス。
抱擁を腰から逃げたのは恥じらいじゃなく、嫌悪感に見えた。
女を必死で押しとどめてもあふれてしまう、いつもそこから逃げてるように見えるのです。

顔が傷だらけなのは、婚約者に殴られたから。
満州に異動が決まった婚約者に、「体力が心配…」「去年寝込んだ母が心配…」と別れを告げるけど、それがなんだか言い訳めいているのはバレバレで、婚約者はそういう祝子に怒りをぶつけた。
木々の間に押し倒して、殴る殴る。
「もっとあたしを叩いて!」
ずーっと地味な映像だったのに、こういう激しさを持ってくるのが向田さんの作品というか、久世光彦さんの演出というか。全体的な穏やかさが、かえって暴発の時を待っているかのようです。

叩かれても罵倒されてもいいだなんて。
欲しいものを全身で欲しがる自分が現れることをそんなに恐れるものか。
独り身でもまっすぐ実家に帰る人は多い。
家族が心配だから。おばあちゃんがいるから。私がしなきゃだめだから。
それは時々本当だろうかと意地悪く思う。
あなたがいなくても、本当は回るのじゃないかって言葉は押しとどめる。
本当は何がしたいのか。それを見つめる恐ろしさ。何もないかもしれないし、もしか大それたことかもしれない。
抑えすぎてるんじゃない?
祝子の妹みたいにいつかぶつけてしまいそう。
知り合いのいそいそと帰る背中を、そんな気持ちで見送ることは多い。

物語の最後、母親が亡くなった後に、結局祝子は満州まで婚約者を追いかけていった。
時々、私が本当に思い切れるのは母が亡くなったあとかもしれないと考える。
姉が私を冷やかす鋭さもないほど老いてからかもと。
身内から激しさを悟られるのは、私もずっと嫌だった。
私にも何かしらのブレーキが働いてたと言える。
抑えて生きる。
そんなの望んでないんだけど、何か振り切れたときに現れる本当の女の顔を、いつになったら好きになれるかな。
向田邦子さんの本もまた読んでみようと思いました。

 

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