阿修羅の男と女

BSの「阿修羅のごとく」を見てる。
今日はパート2の再放送。

何度見てもいいなぁ。
今年は阿修羅の舞台も観に行ったから、なおさら感慨深い。
でもやっぱりドラマ最高。もちろん昭和版。

色気がすごい。
4姉妹の話でなぜこうも色気がほとばしるんだろう。
それも4者4様の色気。
いや、4姉妹だけじゃなく、女性の役者さんみんなすごい色気ですね。

 

「ただこうしていてくれるだけでいい」

綱子が恋人の前でそう言うシーンがある。
恋人っつうか不倫相手。
「阿修羅のごとく」パート1のテーマが「女」だとしたら、パート2は「男」のように感じた。
4姉妹の父役・佐分利信さんの存在が特にすごい。
綱子の恋人役・菅原謙次さんの色気もすごい。
年配の男性をこうも存在感たっぷりに描くというのは、向田さん自身がかなり年上の男性と恋愛してたことも影響したのかもしれない。

巻子の夫役は緒形拳さんから露口茂さんに変わったけど、この夫の4姉妹への介入はいつも状況を収める。
確かにお父さんってそういう存在だった。
うちの父は相当頼りなかったけど、それでも「ねぇ、お父さんから言ってちょうだい」みたいな会話は母との間で結構あった。
「うむ…」とか渋って、相当背中押さないと動かないんだけど、その動かなさがまた案外よかったのかもしれない。ってことを思い出した。

阿修羅の中でも世代間格差はあり、佐分利信→露口茂→宇崎竜童→深水三章と、若いほど頼もしにも青さはあるけど、歳を取っても変わらない脆さがある。
それでも「そばにいてほしい」「いてあげたい」と女は思う。

風吹ジュンさん演じる咲子がまた一見派手好きに描かれてるけど、そういえばパート1からずっと一途にボクサーの恋人を支えた。寝たきりになっても(泣ける!)

一方、男。
巻子の夫は「あぁ…家の水はうまい(どうしてこんなにうまいのか)」としみじみ言う。
秘書と想いが通じ合ってたのかはよくわからないけど、「戻るところ」への信頼というか愛がにじむ。
「ただそばにいてほしい」が女の望みとしたら、男のアンサーってなんだろう。
やっぱ「うむ…」ってことなのかな。
渋々とはいえ「じゃ、そうしようか」という最終選択“みたい”な。ファイナルアンサーじゃないところがニクい。女にはファイナルと思わせるとこが男の愛なのかもだけど。
綱子の愛人だって、最終回では妻とのナイスコンビを見せた。

滝子をガバッと抱きしめる勝又みたいな愛が女の理想として。
どうしてその勢いが失せていくことをあんなに悲しむのか(自分も含めて)
勢いの先に安心と平和がある。はず。
その「はず」が不安でまた。
綱子姉さんの歳になっても(48)勢いを求める分、不安でさびしくてどうしようもない。
巻子だってあんなに頼もしい夫と子ども2人、一見理想的なのに空虚さと不信感がつきまとう。
あらゆる女の苦悩がこれでもかと詰まった作品。
それでもラストに、幸福論の答えが描かれてるような気がした。
「私にはやっぱりあなたが必要で」
と自分自身が感じまくること、私はそう思ったんだけどね。

ラストの八千草さんの顔には、そう感じまくるからこその悔しさもにじんでた(その演技がまたすごい)
亡き妻の幻影をふと見た佐分利信さんには「お前をずっと忘れてた(けど思い出すもんだ)」という降参感が、幸せそうな笑みとして浮かんだ。
でもやっぱり男はほかの人を好きになるかもしれないし、女はどうであっても疑い続けるかもしれないし。という未完の感じがいつも向田さんの作品にはある気がする。

令和は昭和ほど激しくない、何もかも穏やかな気がするんだけどね。
信じるし一途だし、それ普通じゃね?(コスパ的に)とかいうメソッドが浸透してるように勝手に思ってるけど。
それじゃつまんない!という激しい分子が今も華やかな恋愛をしているんだろうか。

 

 

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