西村賢太と蟹座男

さっき西村賢太さんの著書4冊目を買いました。

この1ヶ月で3冊読んでいるのです。
しかも一番最初に買ったのは芥川賞受賞作品「苦役列車」ではなく、「けがれなき酒のへど」。

このタイトルの不穏さに惹かれて手に取ってみたらば、案の定第1ページ目から「吐く」という単語が出てくる。
それは日頃絶対遭遇したくない、過剰に嫌悪するもののはずなのに、その反動か西村さんの文章の魅力なのか、ぐーっと引き込まれてしまったのです。

西村賢太さんの作品は「私小説」で、ほぼ西村さんの経験がベースになっている。
主人公はほぼ「北町貫多」で、この貫多が今回は何をしてくれちゃうのだろうという期待は、これまで3冊読んでも裏切られないひどさ。
特にひどいのは17歳の北町貫多。
こいつが大人になったらどうなるんだという恐ろしさを最初は拭えませんでしたが、20代の貫多、30代の貫多と、ちょっとずつ角が取れてくるところにまんまと愛おしさを抱いちゃう私はバカなのかな…と思ったりするほどです。
しかも30代の貫多は相変わらず女に飢えていて、「買淫」に明け暮れた挙句、風俗嬢に本気で入れあげる。
この風俗嬢に貢いでしまう物語が「けがれなき酒のへど」ですが、その次の小説タイトルが「焼却炉行き赤ん坊」
こわっ…読むのに勇気がいるじゃないですか。貫多がついに女性と暮らす物語。
それでもこのタイトルのせいで最後の最後までスリルを抱きながら読んでしまう。
しかもむちゃくちゃ笑えました。
笑ってる場合じゃない展開が訪れるんじゃないかというスリルは、これまでどの本を読んでも味わったことがありません。

 

西村さんの小説はそりゃ最低です。貫多が最低。
数々の暴言、侮蔑の言葉、悪事のあとの急速開き直り。
巻末で六角精児さんがおっしゃるのが「衝撃的に面白い」
これに尽きるんですよね…。
難しくて聞いたこともない漢字や単語がたくさん並びます。もしかしたら造語もあるかもしれない。
それがまた絶妙で、難解な漢字ばかりの中に痛快なカタカナが忍ばせてあったりする。
例えば「ライトブス」とか。

ブス、ブス言いまくってんですよね。
しかも嫌いな奴とか自分を見下す女を「臭い!」と見なすマウンティング。
こうすることでしか自分を保てない。
胸の内での罵倒。何なら表情に滲ませたりもして。
これがまたひどいのなんのって(笑)

それもこれも貫多の家族に降りかかった事件を思うと、こんなに歪みまくった貫多として成長するのもしょうがないのかも…と一瞬思わせる。
父親の忌まわしい犯罪歴、その後両親離婚、貫多の自暴自棄からの高校進学の諦め。
つまり中卒。ひとりきりで生きてかなきゃならない貫多は、15の頃から年を偽るなどしてその日暮らしほどの収入をなんとか得る生活。
家賃1万円。収入をその家賃に充てることが小説内ではほぼなくて、年頃で「根がローンウルフ」な貫多はソープや飲み食いに真っ先に充てる…。
しかし西村さんは、読者に同情の隙を決して与えないのです。
「こいつ…こんにゃろめ…」という軽蔑感と怒りをずーっと読者に味わわせながらも「見守りたい」と思わせるのが西村さんのテクなのでしょうか。
1冊読むと、まんまと愛着が湧いちゃってます。
それは貫多というよりも、このお茶目な書きっぷりの西村さんに魅力を感じざるを得ないです。

この貫多の物語をぜひテレ東深夜でやってほしいなぁなんて思ったりもして。
「貫多役には誰がいいだろう?」なんて勝手に想像してみる日々。
映画「苦役列車」の主役は森山未來さんでした。
ちょっとかっこよすぎですよね。
でも映像を少しだけ検索したら、森山さんのお腹がふっくらしていて、西村賢太さんっぽさを出すために太ったんでしょうかね。
こういう役作りができるのはやはり森山さんの素晴らしさ!

私が「貫多」をイメージしてみてるのは岡崎体育さんです。
ただ17歳の貫多はまださほど体は大きくないようだけど、でも岡崎さんの「FRIENDS」「からだ」とかのMV見ると、結構悪い顔してんですよね(笑)
なのに気が小さそうというか。
「これは経費で落ちません!」では馬垣というクズ社員を演じてましたが、うまかったのですよ!
ああいう小ズルい感じが合いそうな気がして。

30代の貫多には板尾創路さん、40代の貫多には六角精児さんがいいんじゃないかなと。
板尾さんはもう56歳なので30代役は無理かもだけど、風俗嬢に入れあげたり、同棲中の女性への非情さのあたりとか、恋愛担当。
六角精児さんは、小説を書き始めてる貫多を演じてもらいたいものです。
藤澤清造という作家を崇拝するあまり、能登の墓地に月に1度赴くところの心理描写とか、それでいて東京に戻れば真っ先に買淫に走ったり、満たされたはずの1日の終わりにひどい吐き気でのたうち回るところとか。
ぎっくり腰のみじめさのあたりも六角さんぜひ!と。

ほかにいろんな男性を思い浮かべてみましたが、例えば山田孝之さんだとまだかっこよすぎるけどハマるかもしれない。あと矢本悠馬さんは17歳の貫多にいいかも?と思ったりもして。
菅田将暉さんは絶対ダメです。
こういう役に安易に充てられそうな隙のある菅田さんですが、西村賢太さんの世界観ではない。

岡崎体育さん、板尾創路さん、六角精児さん、そして西村賢太さんに共通するのは「太陽蟹座」というところです。
蟹座男性って結構クズかもしれない…と思ったりしました。
同じく蟹座のブラマヨ吉田さんも合いそうな気がしてきます。小杉さんでもいいけど(蟹座)
田中圭さんは、ここまで人気が出る前ならそれなりにハマったかもしれません。
でも今じゃもうダメです。「おっさんずラブ」以前の田中さんを思い出せません。

あとやっぱり濱田岳さんはぴったりな気も。
でもすごい器用そうなとこが不思議な懸念です。
とにかく貫多という男はひどいので(笑)
どんな役を演じても人気が衰える心配のない人じゃなきゃだめでしょうね。

そうすると「カメラを止めるな!」のような無名の方達で作り上げないと、そもそも事務所がOKしないかもしれません。
実際、貫多が入れ上げる風俗嬢役には、あの血まみれタンクトップ女性(秋山ゆずきさん)がぴったりに思えます。
真魚さんは最近あちこちテレビに出られてますが、貫多の彼女役が似合いそう。
もしくは猛烈に罵倒される女性の誰かとか。
監督役の濱津さんもダメっぽさがあふれてますが、いかんせん優しげ。
濱津さんは乙女座なのですが、やっぱり蟹座男性じゃなきゃリアルなクズさは滲み出ない気がします。
宮藤官九郎さんもいい具合に蟹のクズさを表現してくれそう。
イケメンだけど賀来賢人さんも意外にいいかもです。
蟹座男性って何なのでしょうね。
滲ませるクズさの中に、「可愛い…」とまんまと思わせる天性の堕落がある方達の気がします。
あと人間性のひどさ…は誰しもに備わってるとして。
蟹座男性はそれをむしろ武器にして愛されようとするんじゃないでしょうかね。
良い意味での開き直り。

西村賢太さんもまた金星乙女座なんですよね。
火星は天秤。やっぱりこうでなくっちゃいけません。
物語に貫かれる愛(愛欲)の報われなさ…。

 

ここまで読んだ西村さん本は、「けがれなき酒のへど」「苦役列車」「蠕動で渉れ、汚泥の川を」
西村さんといえば「苦役列車」ですけど、けがれ→苦役の順で読んでよかったとつくづく思いました。
同じ一編が収録されてるので、苦役を先に買っちゃうと、「同じだし」ってんで「けがれ」を手に取らなくなっちゃうのはかなりもったいないことなのです。
これから届くのは「棺に跨がる」
タイトルがまたいいんですよ。「腋臭風呂」とか本当にひどいんだけど意外にひどすぎないのです。

まだまだ語りたい気持ちがあります。
4冊目を読んで何か湧き上がったらまた書いてみるかもです。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です