いま・フジファブリック志村

フジファブリック・志村正彦存命最後のアルバム「MUSIC」について、「聴いてると泣けてくる」というコメントをいくつか見かけたけど、それは昔からのファンならではの感慨だと思って聴いてたら、本当に泣けてきました。

おそらく、楽曲として世に出るまでにもっと磨きをかけたかったであろう未完成感と、メンバーが力を結集して作り上げたという渾身さが伝わるから。
最後の曲の「眠れぬ夜」が特に泣けます。

アルバムは計5枚買いました。
アラカルト」「フジファブリック」「TEENAGER」「CHRONICLE」「MUSIC
そして志村正彦全日記集である「東京、音楽、ロックンロール」(写真はこちらから)
もうこの世にいない人に半ば恋してしまったような三月四月です。

誕生日が同じであるということにやけにこだわりたくなり、何よりこの目。
自分と同じまなざしである気がして。
好きが過ぎると「同化」したくなりますよね。自分、その段階…?
志村のことを思って寝るとよく眠れる。あほか。

だけどこのところ、私のICにドラゴンテイルが乗ってるからか、「翌朝ちゃんと生きてるだろうか?」とも思ったり。
もしかコロナが体内に侵入してて、夜中に死んでしまうんじゃないか。
翌朝生きてる確かな証拠なんて何もないじゃんと思ったら怖くなるのですが、あの世へ手を引っ張るのが志村ならいいか(本当に志村正彦が来てくれるなら)…ま、本気で思うほどイカれてはいません。健康で元気です。

 

志村正彦が亡くなった当時、そしてつい最近までも、ひょろっと痩せて思考も理解しにくいような繊細アーティストというイメージがありました。
死んじゃったというニュースとイメージがさほど乖離しないような。
でも日記や詞に触れると、全然認識違いと思った。
それなりの繊細さや不健康さは、例えば飛行機の中で乗務員に介抱されるほど具合悪くなったり、それがきっかけで電車に乗れなくなったり、曲作りに集中すると食事も睡眠もおろそかになる、そんなエピソードから感じられるものの、根っこから漂うものは山梨・富士吉田を愛する少年。女子の心いまだにわかんねぇと首かしげるような。

フジファブリックといえば「モテキ」主題歌の「夜明けのBEAT」…みたいなイメージがあった。
あの曲もまた名曲ですがドラマの影響もあって、恵比寿リキッドルームっぽさがもわもわ。(私だけの感慨かも)
フジファブリックの中でも異色のおしゃれ曲です。
とにかくフジファブリックにおいて「おしゃれ前面」とか「いい人全開」は一切ない。
もっと男前に見せてもよさそうなのに、もたっとしてる。
それは意図してたのか、男前回避してたのかは謎です。
それが志村らしさならば、私が好きになるのは当然とも言えるわけで。

現在のフジファブリックは、ギターの山内総一郎さんがボーカルも兼任されてアルバムも出してます。
私はまだそこまで手を伸ばせてない。
いつまでも志村ファブリックのことを語るのはよくないかもしれないけど、詞曲を作る1人のアーティストとして、やっぱり素晴らしい才能を持った人だったなぁと、志村特集として1個書いておきたいと思いました。

 

日記集を読んでまず「おっ!」と思ったのが、アルバムへの思い。
どんな人気アーティストでも、アルバムにがっかりすることがある。私もそんな失望続きだったかも。
志村正彦もそれを語っていて、自分は捨て曲を絶対作らない・そこは譲れないとばかりに命を削ってでも曲を生み出しているようだった。
アーティストなら誰もがそんな意気込みで臨んでるかもしれない。
でもフジファブリックのアルバムは本当に「全部好き」と思える。
槇原敬之や椎名林檎の1st2ndのような豊かさが、4枚目、5枚目になってもずっとキープされてるような感じ。

 

こんなに男前なのに「モテない」というのが口癖で、ま、本当にモテるやつこそモテないと言う法則通りの男・志村でもあるのですが(なんだかんだモテエピソードが多数ある)、曲が全般「君に会いたい(もうそれはかなわない)」「花火楽しかったね(今もしょっちゅう思い出すよ)」などなど胸の空白感を歌ったもの。
そこも日記で、「曲を作る人は満たされてはいけない。満たされるといいものを生み出せなくなる」と繰り返し書いている。
そうはいっても人間、愛でこんなに満たされるなら仕事もういっかってなりそうなものなのに、わりと本当に孤独がつきまとう人だったんだと思う。
日記ではネガティブを押し隠そうとしてダダ漏れだったりして、それがいいんだ。ネガティブがずっと心の底にある人。

ヨーロッパでのアルバム制作風景DVDの中で、現地の女性に「メンバーで誰が好み?」というアンケートをとってたけど、志村は女性が「シムラ」と言うたびに「マジでぇ!意外!?」とめちゃはしゃいでた。
え、そんな喜ぶ…ってか喜びそんな見せちゃう人なんだ…とちょっと引いた(笑)
けど、アルバム制作中は熱く真剣なくせに可愛らしい帽子をかぶり。そんな志村に心掴まれたのはもちろん私だけじゃない。もう膨大と思う。

 

まっすぐな人という印象です。言葉も曲も。
vs東京という抵抗感を宿しながら、東京にあっという間に染まりそうな揺らぎも感じる。それが弱さみたいににじむというか。
そして、「常に新しく面白いものを生み出したい・人を楽しませたい」というところに純粋な人。
(大体惚れそうな人のこと”純粋”とか言いますよね)
だからフジファブリックって、「どんな?」という形容が難しい。
奥田民生がミュージシャンになるきっかけで、確かに民生さんっぽい曲もありながら、どこかくるりっぽく聞こえるものもあるし、真心っぽいのもある。
なんか!あのころ(2009年ごろ)のまだ音楽が「おしゃれ」とさほど絡まないぎりぎりのバンドと思うんですよね。
志村の死によって、その感じが良い意味で冷凍保存されたように思うほどで。
私は「あのころ」にどっぷり浸ってるとも言える。

 

フジファブリックベストは持っていたけど、アルバムは醸し出されるものが全然違う。
まず「アラカルト」の第1曲目「線香花火」を聴いたとき衝撃を受けました。
インディーズのアルバム1曲目でこれはっ!!と。
このアルバムは全曲素晴らしいです。

「フジファブリック」では打ち上げ花火とサボテンレコードが好きです。
「TEENAGER」のChocolate Panic、これはすごいですよ。
東京炎上の「ダバチ」もくせになる。
名曲「若者のすべて」が入ったアルバムでもあります。

「CHRONICLE」、一番好きなアルバムかも。好きと思う曲が一番入ってるというか。
ストックホルムでのレコーディングだからか、北欧系な感じがポップでいいです。
「クロニクル」のイントロがふいに脳内で響きますよ。
「Authem」とか「タイムマシン」「ないものねだり」は最終曲並みの名曲。
あと1曲目「バウムクーヘン」の詞、シンプルで単純なのになぜつかまれるんだろな。

僕は結局優しくなんかない
人を振り回してばかり
愛想をつかさず 僕を見ていてよ

怖いのは否定される事 僕の心は臆病だな だな

「MUSIC」では、PUFFYに提供したという「Bye Bye」がなんか泣けるし、「Hello」もいいですよ。
山内さんが作曲をした「Mirror」は珍しく男女の情景がイメージされる曲です。
名曲!と思える曲がいくつも入ってるアルバムを生み出すんですよ、フジファブリックは。
金澤ダイスケさんのキーボードがどの曲も光ってます。
Superfly・越智さんの夫。

 

「茜色の夕日」「虹」「赤黄色の金木犀」などシングル曲だけでフジファブリックに満足してたころが懐かしい。
ビートルズっぽくもあるかな。
どんな変化球よ?ってな新しさでワクワクさせられる。
「Help!」や「ストロベリーフィールズフォーエバー」で満足してたら、「I Am the Walrus」聴いて大興奮みたいな。

iPodとかスマホで、アルバム手に取らずとも曲をものにできる時代を知らない志村正彦。
そんなふうに「もし今、志村が生きてたら…」と考えてもすぐ行き詰まるし救いもない。
いつか冷めるような恋とも言えるかも。
冷めないかもしれないけど!

 

「サボテンレコード」ほんといいよ。
山内総一郎さんのギターも素敵。平岩紙さんの夫ですね。

こちらは途中ビートルズっぽくてシビれる。金澤さんのキーボードがすごい。

 

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