朝顔とヘドウィグ

ドラマ「監察医 朝顔2」見てます。
映画「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(2001年)は数週間前にU-NEXTで見ました。
それぞれについての少し感想文。

 

「監察医 朝顔」は、シーズン1のときほとんど見てなかったけど、その後のスペシャルドラマにとても掴まれたんですよね。
流れる時間が独特なドラマです。

上野樹里さん演じる万木朝顔(まきあさがお)は遺体から死因を特定する法医学者であり、チームとの仕事ぶりがメインで描かれる。
しかも夫(風間俊介さん)と父親(時任三郎さん)が刑事、事件の解決物語でもあります。
ここまでだと、テレ朝でも放送されそうな王道の医療もの。

でもドラマのもうひとつ大きな柱と言えるのが、朝顔の家族の物語です。
胸を占めるのはいつだって母親のこと。
東日本大震災の津波で行方不明のままの母(石田ひかりさん)。

東日本大震災が描かれたドラマは多いと思いますが、現在進行形のようなストーリーはあまりないんじゃないですかね。
今でも休みの日には母親を探しに東北へ行く。母親の父(柄本明さん)の実家に顔を見せる。
この現在進行形の物語に胸を締めつけられるのです。
被災してない私でも、震災のあの日を振り返るのはとてもつらい。
でも「朝顔」で少し泣くと癒やされるんですよね。
なんというか、置き去りにされてない感じ。
まだ見つけようとしてくれてる…なぜか石田ひかりさんの気持ちになります。

なんたって万木一家ですよ。
子どものつぐみちゃん。今5歳、去年4歳(当たり前か)
どうやって演技してんだろう?と、いや、演技してなさそうな天真爛漫さにきゅーっとなるつぐみちゃん!
親役である上野さんの「つぐみー」って呼び方とか、風間さんが忙しい朝顔をフォローするような「つぐみ、パパと行こっかぁ」、そしておじいちゃんである時任三郎さんのそれらを見つめる優しげな目…これだけで泣けちゃうというね。
この万木家は、つぐみちゃんと石田ひかりさんを含めても全員風星座。
時任さんが水瓶で、ほかみんな双子座です。
風っぽさってあんな感じ?
水と土っぽい重さが全般に漂うドラマなのですが、さわさわっとした家族風景が風っぽい清涼感ということかな。
共演者は水星座が多いです(蟹座…板尾さん、中尾さん、杉本哲太さん、森本慎太郎さん、蠍座…平岩さん、柄本さん、戸次さん。志田未来さんは牡牛、山口智子さん天秤)

今週は、柄本明さんが「今回はこっち来なくていいよ、本当にいいからね」って電話してきたことがとても気にかかる朝顔が、買い物途中でやっぱり気になっておじいちゃんに電話する。
「おじいちゃん、私やっぱり行くよ」
この遠く離れた年寄りの言葉が何をしてても気がかり…っていうリアルさ、上野樹里さんの思いつめた表情もまた「拾ってくれた」という癒やし。
なんだろうなぁ。あんまり見たことのない家族物語です。
物語全体、「死」がベースにあることの優しさかなぁ。
死って過去なんですけどね、明るく前に進もうと人はいつでも促すから、過去を手放せと迫られてるみたいでもあり。
でも「進まないよ」という上野樹里さんのきっぱりしつつ優しげな意志に癒やされてるとも言えます。
「癒やし」って何回も言っちゃったよ。

 

映画「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の主人公ヘドウィグは、旧東ドイツ生まれ・ドラァグクイーン・トランスジェンダー・そしてロックシンガー。そのヘドウィグの愛の物語です。自分の魂の片割れを探そうとする。


amazonより)

「アングリーインチ」とは「怒りの1センチ」
つまり女性への性転換手術の失敗で、1センチ残ってしまった。
この1センチが壮絶な破局・究極の怒りまでもたらしたという。

この作品はもともとミュージカルで、ジョン・キャメロン・ミッチェル氏が原作・脚本・監督、そして主演のヘドウィグも演じてます。
ヘドウィグが美しかった…
特に恋に落ちたとき。

あの若い子が自分のライブを見に来た。
これから恋に落ちるしかない2人。

このシーンがとても好きです。
この表情は一体誰ができるだろう。そう思うシーンばかりだった。
体の芯までマイノリティーと痛感してる人にしか表れない表情じゃないのかな。

日本版ミュージカルでは、森山未來さんがヘドウィグ役を演じたようです。
この間の「ダウンタウンなう」で、そのことに少し触れてました。
森山さんはこの役をやるにあたり野宿生活をしたと。1ヶ月も!!
ヘドウィグにはホームレスのエピソードなどないにもかかわらず。
…やっぱ森山さんすごいと思った。
ヘドウィグを演じるからには、地を這い回るようなどん底生活をするしかないと。
マイノリティーの役ですもの。しかもベルリンの壁崩壊前後を生きてきたヘドウィグ、若い恋人に拒絶された上、自作の曲を盗られてしまった屈辱。若い恋人はその曲で今や人気ロックスターに。

ダウンタウンと坂上さん・若槻さんからはただただ変人扱いしかされてなかったけど、そりゃこの人らにわかりっこないと思った。
森山さんは表現者としていわば成功者だけど、それらから解き放たれようと、どこか持たざる者でいようとする。
そうじゃないとにじまないリアルさ。そうまでして表現したいこと。
ヘドウィグはそうでなくっちゃ…。

また、ヘドウィグの夫役・イツハクが切ない…。

イツハクも元ドラァグクイーンですが、女としての格好をヘドウィグに禁止されている。
イツハクにとってそれは虐待に近いほどつらいこと。夫婦でありバンド仲間の2人はそういう歪んだ関係。
この俳優は女性です。
そのあたり、ミュージカルを観ないと分かりにくいところがいくつかあって、調べながら見て、見てまた調べて…いろんな人の感想や解説に助けられました。

プラトンが唱えた「愛の起源」をもとに作られた歌の中では、かつて3つの性があったとヘドウィグが歌う。太陽、月、地球。
それらが神々のいたずらで割られ、みんな自分の片割れを求めて彷徨う。自分の片割れは…

この2つの何に胸打たれたかというと、置き去りにされゆくものに焦点が当たったところかな。
人は新しいものを求めるし、そりゃ明るいほうがいい。朝顔とヘドウィグは陰がある。
希望も宿してるんですけどね、人に時間に追い越されていく。
流れの中で立ち止まる朝顔とヘドウィグに惹かれたのかもです。
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督がそんな人です。牡牛座。
よりよいものを作るために時間をかけて思いを込める。
インタビューでは、今の若者を猫のようだと警鐘を鳴らします。

ョン・キャメロン・ミッチェルが語る愛とパンクとジェンダー

 

それで、ドラァグクイーンといえば思い出されるのがローラであって。
歌い・踊るヘドウィグを見て胸を締め付けられたのは、三浦春馬さん演じたローラの面影を見た気がしたからかもしれません。
独特の美しさと切なさを併せ持つドラァグクイーン。
ヘドウィグを見て、誰もこの美しさにはかなわないと思ったけど、春馬さんが演じたローラも飛び抜けてた。この大いなる長女感。
春馬さんはこの役をやりたい!と自ら申し出た。その意味ってとても深いと思う。
このなんとも憂いを帯びた切なげなドラァグクイーンをやりたいんだということ。三浦春馬さんの視点はいつもどこにあったかが、自ずと伝わってくる気がした…少なくとも上から見る人じゃない。もっと深いところを知ってた人・知ろうとした方だったんじゃないのかな。

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